居宅介護支援事業所の独立性をめぐるジレンマ
ケアマネジメント機関の在り方をめぐって考えてきたが、このケアマネジメント機関の在り方に関してニッセイ基礎研究所・主任研究員の三原岳は次のような提案をしているので紹介します。
「ケアマネが独立性を確保しにくいため、代理人の仕事がやりづらくなっていると考えています。居宅介護支援費を市町村の地域支援事業に組み込めば、さまざまな社会資源をケアプランに反映できる上、介護保険と異なる収入源を持てるので、ケアマネが独立性を発揮しやすくなるのではないか」同時に三原は「仮にこれが実現した場合、保険者の権限や影響力が強まり、専制が起こる懸念もあります。」と述べています。
確かに現在でも保険者による適正化事業等により居宅介護支援事業所に対する指導が強化されている中で、ケアマネジメントそのものへの規制が強くなることは十分想像できます。さらに保険者により介護事業所への指導、影響力の濃淡にかなりの差があると感じることが多い現状からみても問題が多いと考えられます。
イギリスのケアマネジメントに関する白澤政和の紹介記事が「日本ケアマネジメント学会News34 2018.10.15」に掲載されているので紹介しておきます。
イギリスのケアマネジャーは公務員として社会サービス部で仕事をしているが、社会サービス部には決められた年間予算額があり、その予算額内に収めるため厳しい査定が行われており、「イギリスのケアマネジャーは、年間予算という財源のもとで、上司と利用者の間に挟まれ、ケアプランについてジレンマが生じている。」と紹介しています。
日本の介護保険では、利用者本位という目的を実現するために、居宅介護支援事業所は特定の種類又は特定の事業者若しくは施設に不当に偏ることのないよう、公正かつ誠実にその業務を行わなければならないと組織としての公正、中立が求められている。ここでケアマネジャーの公正、中立を脅かすものとして、特定の事業所、管理者が想定されているのとは大きな違いがあるといえます。
ケアマネジメント機関としてどちらの在り方がいいのか、それぞれにいい面と悪い面があるのであろうし、簡単に結論が出るとも思えませんが、私としては、とりあえず今の介護保険の中の居宅介護支援事業所としてのケアマネジメント機関の在り方がいいと思っています。問題はそこに支払われる介護報酬が低いということが問題なのです。
同時にこの問題を考えるとき、ケアマネジャーがその仕事の質を高める普段の努力が重要だという視点が極めて大切だと思います。それぞれのケアマネジャーがその専門職としての価値をしっかり保持すると同時に、知識、技術の研鑽の積み上げこそが、この問題を考える前提にならなければならないと考えています。