AIはケアマネを救うか
昨今、AIによるケアプランの作成の研究開発が進み、その一部では現場のケアマネジャーも参加した実証実験も始まっている。
はたして、こうしたAIを活用したケアマネジメントは、現場のケアマネジャーに何をもたらすのであろうか。
ケアマネジャーが作るケアプランは、それが同じケースであったとしても作成するケアマネジャーにより必ずしも同じものになるとは限らない。それはケアマネジャーの基礎資格や経験年数等により影響を受けるからである。さらにケアマネジャーの価値観も影響するであろう。
膨大なデータに基づいて作成されたAIによるケアプランは、基礎資格による偏りを是正し、新人であろうとベテランであろうと一定のケアプランの作成を可能にするであろうことは想定される。
さらにケアプラン作成に伴う事務的な仕事の軽減が図られ、本来行うべき対人援助や相談業務に集中することができるとすれば、AIはケアマネジャーにとって素晴らしい未来を保証するものとなろう。
しかし、実際に現場でケアマネジメントを行っている私たちからみる、そんなにうまくいくのか疑問も多い。
ケアマネジャーが利用者のアセスメントを行うとき、専門職として皮膚感覚で感じるものやこだわりがある。利用者と専門職としてのケアマネジャーという人と人との交流の中で行われるものは生きものでありライブである。これをコンピューターに期待することは難しく、対人援助の醍醐味といってもいいと思う。こうした対人援助におけるアセスメント力は専門職としての極めて重要な能力である。AIによるケアプラン作成は、こうした専門職としての努力と能力を干からびさせることを危惧させる。
すでにこうしたAIが活用されている看護の現場での次のような指摘がされている。
標準看護計画は「一方で、患者の個別性が看護計画に反映されにくくなり、看護師のアセスメント能力の低下を招いてしまうというデメリットがある。本来、看護というものは患者一人一人に個別に計画され、実践、評価されるものである。しかし、今の医療現場では業務の効率化が優先され、看護が形骸化している状況が引き起こされているのではないかと危惧される。看護の質の低下である。」(「家族ケア」岡本真知子・萱間真美)
いずれにしても、AIによるケアプランの作成という時代は不可避なものであろう。対人援助の専門職としてどのように向き合っていくかは時代の課題であると考えられる。