あなたは長生きしたいですか
クリニックで訪問診療に携わる現役医師であり小説家でもある久坂部羊は老いの現実を次のように語っています、「たいていは80歳半ばから、全身が猛烈な老化現象に攻め立てられ、起居に激痛、食事に誤嚥の危機、排せつに粗相の連続、目は疎く、耳は遠く、味覚・嗅覚も鈍麻し、もの忘れは激しく、あらゆる不定愁訴に悩まされ、若いころから喫煙していた人は息をするにも努力を要すという状態になる」と厳しい。また、「終末期医療は困難な選択の連続」であり、「望ましい最期を迎えることは、よほど幸運に恵まれないとむずかしく、たいていは嘆き、苦しみ、悔みながら亡くなっていく」
高齢期について聞いたある調査によると、「高齢者になることに不安がある」と答えたのが83%と、多くの人が老いることに対して不安を持っています。
また、「長生きしたいと思うか」の質問に「思はない」と答えた人が41%という数字からは「長寿」という言葉とは程遠い現実を多くの人たちが認めているのかもしれません。
自らの老いを認めようとしない高齢者もいます。人様の世話にならないようにと頑張る高齢者が時として、他者の意見を受け入れず孤独で悲惨な現実をむかえることもあります。 「健康であり続けたい」「年寄りはごめんだ」というように老いを否定して健康ということにこだわり過ぎるのを「健康病」というそうですが、これはこれで困った病です。
国が示す介護保険の文章の中には、「介護予防」「自立支援」等の言葉が飛び交うが、こうした老いの現実の中でこれらの言葉がむなしく聞こえてしまうというのは私だけでしょうか。
一度、ケアマネジャーの皆さんに聞いてみたいと思っている。「あなたは長生きしたいですか」と。