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介護保険のめざす「自立」とは(その2)

 介護保険の目的は下記に記す介護保険法第1条に示されている『自立』にある。

介護保険法第1条「この法律は、加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態となり、入浴、排せつ、食事等の介護、機能訓練並びに看護及び療養上の管理その他の医療を要する者等について、これらの者が尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を行うため、国民の共同連帯の理念に基づき介護保険制度を設け、その行う保険給付等に関して必要な事項を定め、もって国民の保健医療の向上及び福祉の増進を図ることを目的とする。」

 この介護保険法第1条の『自立した日常生活』という条文がどのような自立を意味するのかこの条文だけでは定かではない。

しかし近年、介護予防の強化を通じて介護保険給付の抑制を目指す「自立支援介護」が重視されており、そこでは、自立とはADLを改善して他人の手助けを必要としない状態、つまり専ら要介護状態の維持・改善を意味するようになっている。介護保険制度では要介護・要支援の認定を受けない高齢者を非該当(自立)と呼んでおり、非該当に誘導することが「自立支援」と理解されていることになる。
 こうした介護保険の「自立支援」の考え方は、平成30年の介護保険改定にあたって「自立支援・重度化防止に向けた保険者機能の強化」として市町村が実施する自立支援・重度化防止の取り組みが制度化され、さらに介護報酬改定にあたっても「自立支援・重度化防止に資する質の高い介護サービスの実現」としてリハビリ機能の強化、通所介護のアウトカム評価等が盛り込まれる等一層この「自立支援」の考え方は強化されようとしている。

こうした介護保険の考える「自立」は、障害者福祉の「自立」は明らかに異なる。当事者運動を経た結果、障害者が日常生活で介助者のケアが必要だったとしても、障害者が自らの人生や生活の在り方を自らの責任において決定、または自らが望む生活目標や生活様式を選択して生きることを「自立」と見なしており、言わば自己決定権を行使しつつ、生活主体者として生きる行為を自立生活とする理念を重視している。日本の社会福祉の目的・理念・原則と対象者別の各社会福祉関連法に規定されている福祉サービスに共通する基本的事項を規定した社会福祉法も『自立』は同様の内容として理解されてきた。

介護保険も制度創設当初、利用者の自己決定による自立を重視する障害者福祉と同じような議論があった。例えば、有識者として制度創設に関わった行政学者、大森彌による書籍では「自立支援」とは高齢者による自己選択権の現われとし、自己選択を通じて高齢者の尊厳が保たれるとしていた。(大森彌編著(2002)『高齢者介護と自立支援』ミネルヴァ書房pp7-10)
 こうした介護保険の『自立支援』は、先に指摘したように介護給付費の抑制という国の意向に強く影響を受ており本来の「自立」とはということをゆがめているように思はれる。

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