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つぶやき

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ケアマネのつぶやき

私の初夢

ケアマネジメントと連携

ケアマネジメントにおける連携の意味

ケアマネジメントは、保健、医療、社会福祉等の専門職や様々な人々と連携、協働して利用者のニーズを解決し、生活を支援し、自立を目指していくことである。

ケアマネジャーにとって、連携や協働がいかにうまくできるか、言葉を換えれば利用者にとって役に立つネットワークをどのように作り上げることができるかは極めて重要な課題だと言える。

 その連携ということに着目して、利用者を中心としたサービスを担う人たちとの連携、医療、介護の連携、地域との連携の三つの側面での今のケアマネジメントの現状を考えてみたい。

利用者を中心としたサービスを担う人たちとの連携

 この点では、サービス担当者会議というものが当初から介護保険のケアマネジメントプロセスの中で必須なものとして位置づけられたということは大きく影響しており、その内容、有効性はさておき、ほぼどのケアマネジャーにおいても利用者を中心にした一定の連携が行われていることは間違いない。

 ただこの点では、強い強制力を持った実地指導を無視できない居宅介護支援の中で、形式的なサービス担当者会議の開催が優先され、真に利用者の支援に役立つものになっているかは考えなければならない。一般的に、いろんな約束事が制度化することによって、その形骸化のリスクが生じることはよくあることでもある。このことは現場のケアマネジャーとしては反省すべきことがあるように思われる。

 

医療、介護の連携

 医療、介護の連携に関しては、全国各地で様々な取り組みが行われている。当地域でも「紀南地域包括ケア研究会いこら」の取り組みや、紀南病院内につくられた「あいくる」等の取り組みが進んでいる。またこの面ではICTを活用して連携を強化しようとする取り組みも各地で見られる。

こうした前進の要因として。国が推進している「在宅医療・介護連携推進事業」が大きいと考えられる。在宅医療・介護連携推進事業では以下の8項目を実施することが求められている。
・地域の医療・介護の資源の把握
・在宅医療・介護連携の課題の抽出と対応策の検討
・切れ目のない在宅医療と在宅介護の提供体制の構築推進
・医療・介護関係者の情報共有の支援
・在宅医療・介護連携に関する相談支援
・医療・介護関係者の研修
・地域住民への普及啓発
・在宅医療・介護連携に関する関係市区町村の連携

 この事業は、これら8項目すべての実施を求めるのではなく、一部項目の選択的実施や、地域独自の項目の実施を可能とする方向に進んでいくようである(第85回社会保障審議会介護保険部会、資料2)。今後は地域に必要な医療と介護の連携をどのように作り上げるか、地域の独自の創造的な取り組みが求められることになると考えられる。さらに、診療報酬や介護報酬を通した政策的誘導も無視することはできない。

 こうした中で、ケアマネジメントにおいても、利用者の入退院時やかかりつけ医との連携はかなり進んでいると考ええいる。

地域との連携

 地域との連携を考えるとき難しいのは、連携すべき相手、システムが決まっていないことである。上記の二つの連携の場合は、介護事業者であり、病院であり、かかりつけ医等と連携すべき相手とシステムはおのずと明確になる。ここが地域との連携という課題の難しさといえる。

 では地域において連携すべき相手やシステムとして何が考えられるのであろうか。まず利用者を取り巻いてる家族や親せき、隣近所や地域の人々、民生委員や町内会、そして新しい組織されたボランティアや趣味のサークル等、人によっては宗教が大きな役割を果たすこともある。これらはインフォーマルサービスと言われているものである。それらは初めから組織され、システム化されているものは少ないから、支援が必要な利用者のために誰かがつないだり、有効なシステムを作り出していかねばならない。

 いったい誰がこれを担うのかが問題である。しかし、今の地域の中でこれを専門的に担う人はいない、必要と感じた人が行うしかないのである。したがって、現実的には利用者の支援のために必要と感じたケアマネジャーがこの困難な仕事を行うことになるのであるが、ケアマネジャーもこの仕事を上手くできていないのが現実である。
 ケアマネジャーは介護保険の介護支援専門員として要介護高齢者の個別支援を求められてきた、そしてまず第一義的にケアマネジャーに求められているのは介護給付の中でのサービスを組み立てて提供することであった。地域に入り新たなつながりや問題解決の資源を作り出す等の活動、これらはコミュニティケースワークと言われるものであるが、ケアマネジャーはこうした活動の教育は受けていないし、利用者の問題解決のために地域の中のインフォーマルなサービスを活用しようとする発想にもなじんでいないのが現状であろう。

 では、こうした地域で活動しニーズを持つ利用者とインフォーマルサービスと結びつける人の存在をもとめられることは可能であろうか。

そのような役割を持つ専門職として、国は地域生活支援コーディネーターの配置を義務付けている。厚生労働省は生活支援コーディネーターの役割について「高齢者の生活支援・介護予防の基盤整備を推進していくことを目的とし、地域において、生活支援および介護予防サービスの提供体制の構築に向けたコーディネート機能を果たす者」と定め、その具体的な仕事を次のように示している。

(1)社会資源を適切に把握し、地域の住民のニーズに合わせた新しい福祉サービスの開発と育成

(2)地域における新しい福祉ネットワークの構築

(3)地域においての支援に関するニーズと取組みのマッチング

 こうした役割を担って活動を始めている生活支援コーディネーターたちの活動はまだ始まったばかりであり、その評価を定めることはできないであろうが、私の身近で見聞きする範囲では、極めて困難な課題に挑戦し、苦労している彼及び彼女たちの姿である。

 最近、社会的処方という言葉を耳にした。イギリスにおける新しいシステムであるがここでこの社会的処方について紹介しておく。

 もともと社会的処方とは、イギリスの保健省や保険医療システムが打ち出したもので、従来の医療の枠組みでは解決できないような困りごとを持つ人々を、地域のサポートグループや趣味の団体、ボランティア活動などの社会資源へつなげることによって問題を解決していこうとするもののようである。 

 イギリスでは、この社会的処方が「個人の善意や奉仕」ではなく社会システムとして位置づけられている。具体的には、医療や介護の専門家とコミュニティーグループをつなぐ「リンクワーカー」という人々がいて、社会的処方が必要そうな患者がいる場合、医師や看護師などがリンクワーカーに連絡すると、依頼を受けたリンクワーカーは自宅を訪問し、患者のニーズを聞き取ります。そのうえで社会的処方として適切なサービスへとつなぎ、フォローアップする。さらにリンクワーカーは地域の資源を見つけ出すだけでなく、人々をつないで新たなサービスを作り出す活動もしているそうである。

 これから先は、2020年の私の初夢である。

もし、前述の生活支援コーディネーターにイギリスのリンクワーカーのような働きが期待できるとしたら。ケアマネジャーや保健、医療、福祉の専門職が地域のインフォーマルな支援が必要だと考える利用者がいたとき、生活支援コーディネーターに繋ぐシステムができればどんなにかいいかと考える。

これがケアマネジャーとしての私の初夢である。

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