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利用者本位を考える その3

居宅介護支援事業所の利用者本位、公正・中立、独立性を考える 

利用者本位を考える場合、もう一つの根本的な問題が居宅介護支援事業所(ケアマネジメント機関)の組織としての公正、中立、独立性の問題である。

利用者本位という目的を実現するために、居宅介護支援事業所は特定の種類又は特定の事業者若しくは施設に不当に偏ることのないよう、公正かつ誠実にその業務を行わなければならないと組織としての公正、中立が求められている。

さらに具体的に「指定居宅介護支援等の人員及び運営に関する基準」では以下のように規定されている。

「指定居宅介護支援事業者及び指定居宅介護支援事業所の管理者は、居宅サービス計画の作成又は変更に関し、当該居宅介護支援事業所の介護支援専門員に対して特定の居宅サービス事業者等によるサービスを位置づけるべき旨の支持等を行ってはならない。

2 居宅介護支援事業所の介護支援専門員は、居宅サービス計画の作成又は変更に関し、利用者に対して特定の居宅サービス事業者等によるサービスを利用すべき旨の指示等を行ってはならない。

3 指定居宅介護支援事業者及びその従事者は、居宅サービス計画の作成又は変更に関し、利用者に対して特定の居宅サービス事業者等によるサービスを利用させることの代償として、当該居宅サービス事業者等から金品その他の財産上の利益を収受してはならない」(「指定居宅介護支援等の人員及び運営に関する基準 第25条」)

しかし、この公正、中立をめぐっては大変危うい状況にあるというのが現実である。なぜなら全国の居宅介護支援事業所の9割は何らかのサービス提供事業所の併設になっている。独立事業所は1割に過ぎないのである。なぜなら居宅介護支援事業所に支払われる介護報酬が低く据え置かれたままであるため、居宅介護支援事業所は介護保険が始まって以来ずっと赤字が続いている。このことは厚労省の統計でも示されている。単独では赤字になるため当然の結果として施設や訪問介護事業所、通所介護事業所等のサービス提供事業所の併設という形をとらざるを得ない構造となっている。この構造は、ケアマネジャーが利用者の選択とサービス提供事業所の利益が相反した場合、事業所の意向を無視できないことは容易に想像できる。結果として事業所の営業マンとして働くことを求められることになり、利用者本位、公正、中立を危ういものとしている。

もちろん併設事業所であろうと、公正、中立という姿勢を堅持されている居宅介護支援事業所があることも知っている。そうした事業所は管理者がケアマネジメントに関してしっかりした理念を持っておられ、実質的な独立性を実現されている。しかし、先に述べた介護保険の中での居宅介護支援事業所の構造的な問題は解決されないままである以上、ケアマネジャーの公正、中立という倫理に期待されるだけでは危うい状況にあることに変わりはない。

 この問題を解決し、利用者本位のケアマネジメントを実現するために、居宅介護支援に支払われる介護報酬を引き上げることによって、独立した事業所として事業運営が可能にすることである。これにより、介護保険が掲げる利用者本位の基本的な理念を実現できるものと考えている。

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