居宅介護支援事業所の公正中立の確保のため解決すべきこと
医療経済研究機構というところから出されている「ケアマネジメントの公正中立性の確保の取組や質に関する指標のあり方に関する調査研究」についての報告書を読んだ。その報告書の中で面白いと思ったいくつかを紹介する。
報告によると、「公正中立」の確保のため解決すべきこととして3点を挙げている。
① ケアマネジメントの業務が営利による干渉を受ける環境の解消
② 介護給付の利用に縛られず、多様な地域資源で支えるケアマネジメントを評価すること
③ 特定の介護サービスの供給過多により競争が激化し、供給が需要を作り出す構造を解消すること
経営者のプレッシャーや特定の事業所からの営業(往々にして利用者を通じて)により公正中立が損なわれている現実があり、それは①のケアマネジメントにかかわる環境を改善することにより公正中立が可能になると考えられる。そのためには居宅介護支援に関する介護報酬を引き上げ、独立した居宅介護支援事業所の運営が可能にすることが必要だと考えるが、残念ながらこの報告書の中ではそこまで踏み込んだ提言は見られなかった。但し本報告の中でも「独立型の効果検証が明らかになっていない」と述べられているように、居宅介護支援事業所の独立型の優位性を実践の中で検証し発信していくことが、ケアプランセンターあすかに求められていると考える。
②に関しては、今の介護保険の中でケアマネジャーは、そのケアプランに介護保険の中にあるサービスを組み込まないと、介護報酬を請求することができない仕組みとなっている。利用者の様々な相談に応じ、退院に際して病院と連携を図って退院の支援をしたとしても、介護給付のサービス利用の実績がないとそれはケアマネジャーのタダ働きになっているのが今の現実である。「介護支援専門員が介護給付に縛られず、医療、介護、福祉、生活にまたがる生活課題を制度横断的に対応できるソーシャルワーカーとしての役割を果たせる」ようにすることが「公正中立」の確保という面でも必要なのだ。
サービスの需要と供給の指摘に関してどのように評価するかということは難しい問題もあろうかと思うが、報告書の中で示されているように、事業所数が増えれば受給率が高まるという相関関係を見ることがきる。つまり「供給が需要を創り出す」のである。個人的、感覚的に言わせてもらえば、この地域では通所介護(デイサービス)は供給過多あるいはそれに近い状態にあるのではと私は思っている。あるサービスの事業所数が増えるということは、利用者にとって選択肢が増えるという良い面もあるが、そうすると事業所のお客さんを確保するための営業が強化され、介護費用を膨らませ、ひいてはケアマネジャーの公正中立の確保に影響を及ぼすことになる。やはりサービスの総量規制は検討すべき課題であると考える。