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ケアマネのつぶやき

人間関係の距離

コロナウイルスで私たちは新しい耳慣れない言葉を耳にすることとなりました。ロックダウン、パンデミック、クラスター・・・。そんな言葉の一つに、ソーシャルディスタンスという言葉があります。自分だけでなく相手へのコロナウイルスの感染を防ぐために、必要な人的接触距離をソーシャルディスタンスと言うそうです。

人間を「人」の「間」の2文字で表現するように、人と人の関係、その関係のありようは人間にとって根源的な課題と言えるのではないでしょうか。そしてその関係のありようの指標と言ってもいい一つが、人と人との間の距離です。

 社会心理学には、パーソナル・スペースという用語があります。これは、コミュニケーションをとる相手が自分に近づくことを許せる、自分の周囲の空間(心理的な縄張り)を指すことばです。縄張りですから、ここに他人が侵入してくると、人は不快感や嫌悪感を感じます。防衛本能が働いている状態になるのです。しかし、逆に親しい相手や好意を寄せている相手であれば、容易に受け入れることが出来ます。人は相手に応じて、その距離を使い分けています。多くの人は無意識にこのパーソナル・スペースという距離を使い分けながら家庭や社会生活を営んでいます。ところがその距離がうまく取れないためトラブルを起したり、人間関係の軋轢をつくりだすことを、時として私たちは経験します。

子供も2,3歳ころになると、日常生活の中では、母親と多少離れても平気になってきます、それでも長時間になるとまだまだ不安があります。このようにして親から距離をとっていくことを母子分離といいます。ただこの母子分離がうまくできない子供は母子分離不安となったり、また子供とうまく距離をとれない母親は過干渉や過保護といった問題をつくりだすこともあります。母親と子供の距離をめぐっても難しい問題があるようです。
 介護をめぐって、介護する側とされる側の距離も、時として問題となります。介護する人が男性であれ女性であれ、初めての介護に直面した時、ましてや介護される人への思いが強いとき、”母の介護がすべて”という考え方になってしまうことがあります。母親の介護がその介護者の生きる意味と一体になってしまいます。こうなると、ヘルパーやデイサービスのスタッフに介護を任せられなくなり、介護者は自分だけで介護をしようとします。そして介護者は大きなストレスを背負いこむことになり、この関係は長く続かず、いずれ破綻していくことになります。これを介護共依存と言います。こうした共依存の関係は介護される親にとっても必ずしも幸せなことではありません。その実態は「愛情という名を借りて相手を支配すること」に他ならないからです。

介護する人間にも自分の人生というものがあります。適度な距離をとり、自分のために費やす時間が必要です。そのためにうまく介護サービスを利用し、いろんな人の協力も得られるようにしなければなりません。介護する人とされる人、その適切な距離が必要なのでしょう。

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