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利用者さんのつぶやき

ねじ式締り錠

熊野市  喜田ひさみさん

このカギご存じですか?木製の窓や扉用で、穴に差し込み、ねじで止めることによってカギをかけるものです。

私の実家の裏口がこのようなカギで扉にカギをかけていました。しかし、いつ頃からかこのカギが壊れて5寸釘に紐を付けカギ穴に押し込んでカギの代わりとして使っていたような記憶があります。そして、5寸釘がなくなった後は、扉が開かないようにどこからか棒をひらってきて、扉があかないようにつっかえ棒のようにしていたようです。さらにその棒も何時かしら無くなってしまったようです。

母は要介護3で認知症を患い奇行が目立ちます。棒なき後は扉の隙間に何かしら突っ込んでいました。箱を置いたり、様々な物をぎゅうぎゅうに突っ込んでは、壊していました。

液体洗剤は蓋をしっかり閉めていないので倒れてほとんどその場にこぼれてしまいました。

時には、食べ物を詰めていたこともありました。その都度情けなさとヒステリーの毎日でした。何故ならばそこの鍵があいていても、泥棒が来るわけでもなく何の問題もなかったからです。そして何故そのような事をするのか全く理解できませんでした。

或るとき夫に「なぜあんなところに毎日物を詰めるのか」と怒り狂ってぼやいていたところ「壊れてるんならカギを付け替えようか」と言われました。私は「そんなことしてもこの奇行は無くならない」と余計に腹が立ちました。近くの工務店で「ねじ式締り錠」を購入して取り付けてもらったところ、不思議なことにこの後一度も扉の所に物を詰めることは無くなったのです。そして、母が自分でクルクルと鍵をねじって閉めています。

私はびっくりしました。鬼のように怒鳴っていた私は何だったのだろう。こんなに簡単に奇行が止まるなんて信じられませんでした。高々数百円のカギですが、私にとってはこんな簡単な物でさえ取り付けるという事 は未知の世界だったのです。しかも、カギを付けるだけで母がなくなるとは思ってもいませんでした。

思えば、母にとっては、棒がなくなって「人が入って来るのじゃないのか」とか「カギをしなければ」とか不安になったが「カギを付けてほしい」と人に伝えることが出来なかったのです。それで止む無く物を詰めていたのです。鍵を付け直す事によって、母の不安が解消されたのです。私は、そこに思いが寄らずに行動ばかり気がとられて、単に奇行だと思い込んでしまったのです。認知症からくる奇行だと思い込んでいた母の行動にも理由があったんだと言うことを思い知らされました。

きちんとした鍵を付けることによって、母の心のカギを開けることができました。

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