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ケアマネのつぶやき

替わった文書が謎を呼ぶ話

 4月の介護保険の改定とともに、厚労省は介護保険にかかわるいくつかの書類の様式を改定し、新しい様式を示した。その中で際立ったのは男女欄が消えてなくなっていたことである。この点は、以前厚労省が、就職活動などで使う履歴書について、LGBTなど性的少数者に配慮して性別欄を「男・女」の選択式とせず、記載を任意とした様式例を作成したと発表されていることから、こうした流れを受けたものであろう。「男性・女性」に加えて「その他」という記載方法をとる様式を採用するところもあると聞く。「その他」の表現に違和感を持つ人もいるであろう。いろんな議論がある中で男女欄を削除したのが今回の厚労省の様式なのだ。ただ、医療や介護の中で性別は重要な情報の一つである。介護の世界でも今後、性的マイノリティに配慮しつつ、必要な情報をどのように伝えるか、工夫が求められるところであろう。

もう一つ、今回の文書の扱いについての改定の中で、頭をひねるような問題にケアマネジャーは困惑している。介護保険は「利用者と事業者の契約でサービスが提供される・・・」ということで、サービスを一つ利用するにも押印や署名をお願いし「同意、承諾」をえてサービス利用が始まる。ケアマネジャーが利用者宅を訪問しても印鑑、ヘルパーが訪問した後でも印鑑と、介護保険を利用すると、やたら印鑑、署名が求められてことが多い。今回の改定で「文書の取り扱いについて」こうした問題に対する新しい対応を示している。これまでの押印、署名に代わって「電磁的方法によることができる」とし、具体的には電子メールの利用を例示している。さらに「利用者等・事業者等のあいだの契約関係を明確にする観点から、書面における署名又は記名・押印に代えて電子署名を活用することが望ましい」としている。介護保険の対象は高齢者である。今の高齢者の中で、こうした電子メールや電子署名が使用できる人はいったいどこにいるのだろうか。厚生省のお役人はいったい何を考えているのか、頭をかしげたくなる。

もう一つ、悩ましい問題がある。先ほどの男女別記載欄がなくなった様式の一つにサービス利用票がある。このサービス利用票から消えたもう一つの欄がある。その票の中にあった「利用者確認欄」がなくなったのである。ケアマネジャーは毎月訪問し来月のサービス利用を説明し、利用票を交付し、その控えに印鑑をもらうというのが毎月の仕事であった。この欄がなくなるということは、全くケアマネジャーにとって朗報である。ところがである、この「『居宅サービス計画作成依頼届の様式について』等の一部改正について」という厚生省老健局から発出された文書には(居宅サービス計画書記載要綱)が続いて付けられている。この要綱に、第6表「サービス利用票」の記載要領が示されている。その中で「利用者確認」という項目の説明には「居宅介護支援事業者が保存するサービス利用票(控)に、利用者の確認を受ける。」となっているのである。「利用者確認欄」はなくなったはずである。にもかかわらず「サービス利用票(控)に、利用者の確認を受ける」とはいったいどのように理解すればいいのであろうか。厚労省のお役人が間違うはずはないと思うが、やっぱり頭をひねるような文章である。

現任のケアマネジャーでないとわからないような、細かな話になり大変恐縮ではあるが、どうもお役人の考えることは現場の感覚とは随分ずれているように感じることが多い。それに振り回されて悩むことが多いのも介護保険のケアマネジャーの宿命なのかもしれない。

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