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ケアマネのつぶやき

高齢者の孤立(その1)

コロナウイルスの影響で孤独問題が深まるなか、今年1月末、菅首相は突然、孤独担当相・田村厚労相を指名した。 28日の参院予算委員会で、事前の根回しがない状況で菅首相から指名された田村氏は「えっ!」と驚きの声を上げた。 「田村さん、孤独担当だそうです」と野党議員に振られると「確かに厚労相は、孤独も含め、困っている方々に対応するということだ。孤独問題にもしっかりと取り組んでいく」と、困惑の表情を浮かべて説明した、と報道された。それに先立つ3年前、英国政府は2018年1月に「孤独担当相」の新設を発表していた。

日本の政府がどれほど高齢者の孤立の問題を真剣に取り組むことになるのか、菅首相の単なるパホーマンスに終わるのか、それは定かではないが、いずれにしても、日本だけでなく多くの国で、高齢者の孤立が社会問題になっていることは確かなようである。

その背景には様々な要因があるといろんな識者が指摘している。日本の社会の単位となる世帯が大きく変化している。一般世帯に占める単独世帯の割合は05年の29.5%から30年には37.4%に上昇し「一人暮らし」社会に移行しつつある現実を様々なデータから読み取ることができる。「地域コミュニティの衰退と空洞化」を指摘する人もいる。しかしここではその問題に立ち入ることは避けて、高齢者の社会的孤立と介護保険の関係に関しての話題に焦点を当てたい。つまり、介護保険やケアマネジャーは高齢者の社会的孤立に何をなしうるかという関心である。

この問題を考えていくうえで、私は次のような問題意識を持っている。介護保険は介護が必要な高齢者を対象とするものであり、孤立した高齢者を対象としその対策を担うものではない。具体的には、介護保険は利用者と介護事業所の契約でサービスが提供される。したがって、孤立した高齢者が必ずしも介護保険の土俵に乗ってこない場合が多いと考えられる。しかし現場では、介護保険制度の導入後、公的な高齢者向けの福祉施策は縮小し、そのツケが介護保険の現場に集約されてきていると感じている。前回「ケアマネジャーは『何でも屋』」でふれた現実の一因はここにもあるように思う。本来、こうした仕事を担うべき行政機関は地域包括支援センターに丸投。その地域包括支援センターは介護予防や認知症対策等幅広い仕事を課せられている割に十分な体制が確保できず、その役割を十分果たしているとは言えない。

以上のような高齢者福祉をめぐるケアマネジャーの立ち位置とも関連しながら、「ケアマネジャーは高齢者の社会的孤立に何をなしうるか」を考える。

まず先ほども触れた「サービスや介護保険の利用を拒否する高齢者」の存在がある。こうした高齢者の多くは、地域からも孤立し、たとえ要介護状態になったとしても、支援を求めようとしない高齢者であり、私もこうした高齢者と少なくない出会をしてきた。心配した子供たちや親せき、地域の人たちからの依頼で訪問するが、なかなかサービスに結び付くことは難しい。ケアマネジャーは利用者がサービス利用をしない限り、介護保険的に言うならば利用者の給付管理が発生しない限り、その利用者とかかわり続けることは難しい。ケアマネジャーの間でも、時として「サービスを拒否する高齢者」の問題として議論されることがある。こうした高齢者の対応として、以前に「ケアマネのつぶやきの」中で「サービスを拒否する人々」としてケアマネジャーのかかわりについてふれた。興味のある方はそちらをお読みいただきたい。

こうした高齢者で思い描くのは、一人暮らしの頑固な男性のイメージである。もちろん女性でもいないわけではないが、やはり圧倒的には男性が多い。豊中市社協でコミュニティソーシャルワーカーとして活躍しNHKドラマ「サイレント・プア」のモデルともなった勝部麗子は次のように述べている「高度経済成長期は男性は家庭や地域に目を向けずに仕事をし、家庭内や地域のおつきあいは女性が引き受けていました。女性は群れて、いろんな活動ができる面がありますよね。「集まってお茶を飲みましょうよ」と呼びかけても、男性は、「何のためにお茶を飲むのか」って、目的とか生産性の話になって、なかなか出てこないんです。私は孤独・孤立の問題をずっと支えてきましたが、孤独対策が必要なのは定年退職後の男性ではないかと考えるようになりました。実際に調べてみると、犬の散歩か、図書館行ってるか、ショッピングモールを歩いてる。だれとも群れてないんですよ。」

なかなか男性の老後は難しい。他人事とは思えないのである。

(次回に続く)

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