介護保険事業計画を読む
介護保険では3年に一度、介護保険事業計画を策定することが求められている。そこでは各年度における種類ごとの介護サービス量の見込み、必要定員総数等を設定し、その計画に基づき、介護保険料が設定されるということになっている。
今年度から始まる紀南介護保険広域連合の第8期介護保険事業計画が発表されている。その計画を読んで気になったその一部を紹介する。
まず第一に、この地域の要介護認定率の高さが指摘されている。計画では令和元年の紀南介護保険広域連合の認定率が23.5%であり、これは県平均、全国平均の18.5%をかなり上回っているとしている。この差について、私はこの地域の高齢化率の高さ(高齢化率は令和5年には42.1%となると推計)と、若年者が流出し、地域に残されたのは一人暮らし高齢者世帯と高齢者夫婦世帯という高齢世帯の状況が反映されていると考えている。
次に介護保険サービスに関して、同計画では「特に短期入所生活介護については、利用日数も県、国を大きく上回っている」と指摘し。この現状分析を踏まえ今期の計画の中に「地域特有の課題に向けた取り組み」として「短期入所生活介護の長期利用者等、地域特有の介護保険サービスにかかわる課題について、構成市町村やケアマネジャー、介護サービス事業所と協議を行う場を設けるなど、適切なサービス利用を推進します」としている。この「地域特有の課題」について、安易なサービス抑制ではなく、科学的な調査研究にもとづく分析、評価が必要であると考える。
同時に、介護保険制度としてはあるが、この地域で行われていないサービスとして「定期巡回・随時対応型訪問看護介護」「夜間対応型訪問介護」「認知症対応型通所介護」等があるとされており、新しい計画の中でも全く見込まれていない。しかし、同計画の基本目標の中で示した「重度な要介護状態になっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができる」地域包括ケアシステムの推進という視点からみると、今後の課題となるのではないか。同計画ではこれらのサービスについて「利用者のニーズの動向及び参入意向を継続的に注視します」としている。
今この地域の介護現場で一番大きな課題は介護人材の不足である。この課題に対して同計画は何か新しい施策を示しているか、介護保険にかかわる我々としては最も興味のある問題である。しかし残念ながら、「介護人材の確保に向けた取り組みの推進」という項目はあるが、保険者としての目新しい具体的な提案を見つけることはできなかった。唯一具体的に示されて計画が、管内の高校、中学校に介護職紹介パンフレットを配布するという目標が示されている。
計画では、3年間のそれぞれの介護サービスごとの見込みを示しているが、そこから読み取れるものは、新規のサービスの計画は無く、それぞれのサービスの利用者、利用回数ともに現状と大きな変わりないものと見込まれている。
そうしたサービス量の見込みを踏まえ、第8期の保険料基準額を6,890円としている。これは第7期の222円増となっている。皆さんが支払う保険料はこの基準額にそれぞれの所得に応じ9段階に分かれた掛け率をかけで決まることになっている。