熊野市の高齢者福祉を考える(その1)
――「熊野市高齢者福祉計画」を読んで その1――
熊野市が発表した「熊野市高齢者福祉計画」を読むことができた。そこから見えてくる熊野市が高齢者福祉をどのように考えているかについて考えさせられた。同計画は先に紹介した紀南介護保険広域連合の事業計画とも連動して、令和3年度から5年度までの期間を対象としている。
まず熊野市の高齢者の現状を、高齢化率は国やよりも14ポイント以上高いこと、さらに一人暮らし高齢者世帯が27%と全国や県の割合を大きく上回っていること。さらに高齢者のいる世帯は全世帯の58.7%に上っているとしている。こうした数字は全市的な数字であり、もっと高齢化の進んだ山間部や海岸部の数値はもっと高くなっていることは容易に想像できる。「担い手の確保と社会的共同生活の維持が困難となった」地域を限界集落というが、そうした限界集落やそれに近い地域で暮らしている高齢者が多数存在していることを示している。
問題はそうした地域の現状に対する「今後の高齢者福祉の進むべき基本目標」の2番目に「基本目標2 『絆』をもとに共に支え合い助け合える地域づくり」をあげている。問題は「地域全体で高齢者を支えていく」力がそうした限界集落と言われる地域に残っているのであろうか。さらにそうした目標を実現できるとするならばそのカギを我々はどこに見出すことができるかということである。
国は新しい地域支援事業として、生活支援・介護予防サービスの充実に向けて、ボランティア等の生活支援の担い手の養成・発掘等の地域資源の開発やそのネットワーク化などを行う生活支援体制整備事業という方針を示し、この地域でも市町の社会福祉協議会に生活支援コーディネーターを置き取り組んできた。この取り組みは現場のコーディネーターの努力により一部地域では一定の成果を生み出しているが、全体としては、地域の担い手不足と地域づくりの困難さを改めて示す結果となっているように私には思える。シルバー人材センターの活動は高齢化と地域の共同体の維持が困難になっているこの地域で不可欠な事業となっているが、ここでも担い手不足は大きな課題となっている。つまり担い手問題に示されるように、地域そのものの弱体化の中で「『絆』をもとに共に支え合い助け合える地域づくり」はそれほど簡単なことではないのである。
もちろん私も、この難しい課題に対して明快な見解や提案を用意できてはいない。ただ現場のケアマネジャーとして感じることはある。地域で暮らしている一人ひとりの高齢者のニーズをどれだけ大切にし、そこを出発にして組織活動に結び付けられるかという視点である。ケアマネジャーは個別の高齢者の支援と直面する中で高齢者の様々なニーズと向き合う。ただケアマネジャーは個別の利用者の支援から一歩踏み出して地域の課題としていくことには必ずしも得意ではない。この役割を果たしていくのが地域ケア会議なのであろう。しかし、この地域ケア会議がそうした役割を果たしていないし、そうしたボトムアップのシステムが機能していないという問題があると考えている。官制の地域づくりは決して成功しないと言っていい。
(つづく)