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ケアマネのつぶやき

伴走型支援を考える

近年、伴走型支援という言葉を聞くことが多くなった。今回はこの伴走型支援とは何か、また我々が日々行っている介護保険のケアマネジメントとの関係、といった問題について考えてみたい。

まず、 伴走型支援とは何かを「伴走型支援」奥田知志・原田正樹編(有斐閣)に見てみたい。同書の中で原田正樹氏は、伴走型支援は「社会福祉の現場の中で実践を通して生まれてきた概念です。」そして「法的サービスがない(制度外)支援の中で生み出されてきた哲学であり、実践でした。」と1990年代から発信されてきた伴走型支援の成立の特徴を記している。さらに、対人援助には「具体的な問題解決を目指すアプローチ」と「つながり続けることを目指すアプローチ」があり、前者は「本人が有する特定の課題を解決に導くことを目指すものである。このアプローチを具体化する制度の多くは、それぞれの属性や課題に対応するための支援(現金給付、現物給付)を行う設計となっている。」※1一方後者は「支援者と本人が継続的につながり関わりあいながら、本人と周囲との関係を広げていくことを目指すものである。」※1と説明している。

 要するに、伴走型支援とはつながり続けることをとりあえずの目的として行われる支援の形と言っていいのだろう。

今日、社会福祉がその対象とするケースには複雑で、これまでのようにサービスを提供することだけでは解決困難なケースが増えている。生活困窮者の問題、引きこもりの問題、あるいは我々も時として直面する多問題家族、あるいはごみ屋敷の問題等々である。こうした問題の複雑化、多様化はその背景に社会的孤立という、今日の我々の社会が抱えている大きな問題があるように思える。いずれにしてもこうした課題を抱えたクライアントを前にしたとき、対人援助に係る専門家はとても簡単に解決できそうもないと感じることになる。そして、そこではただつながり続けることを重視した支援の在り方が必然的に求められるようになったのであろう。

 我々介護保険の中に身を置き、そこで対人援助を生業としているケアマネジャーは先の二つの支援のアプローチの定義により分類するならば、介護保険という制度を用い、サービスを提供することにより利用者の「生活全般の解決すべき課題」の解決を目指すという点からみれば、その多くが「具体的な問題解決を目指すアプローチ」ということになるのであろう。しかし、同時にそうしたサービスでは解決できない利用者の支援に係ることもある。客観的には極めて劣悪な環境にあり要介護状態にあると思われるがサービスを拒否する高齢者、利用者の介護が必要であるが家族そのものが多くの問題を抱え機能不全に陥っている家族等々。これらをこれまで私たちは困難事例と呼んできた。そして一向に解決のめどが立たない事例の前に、あるケアマネジャーは困難を抱え込み疲弊していき、また別のケアマネジャーは介護保険給付の枠外の課題として切り捨てたり、「つなげる」というケアマネジャーの役割意識で、地域包括支援センターや他の機関に丸投げすることによりその身を守ってきた。そこには、解決できなくてもいい、とりあえずつながり続けることが大切、という発想は生まれにくい。さらに今日「自立支援」が強調され、エビデンスのもとづく科学的介護の御旗の下で、こうした事例にかかわったケアマネジャーは思考停止に陥っていないであろうか。

たしかにそこでは、それは介護保険のケアマネジャーの仕事ではない、我々は介護という範囲でのみ仕事を行うべきだという反論に出会うかもしれない。まさにここでは、必要な部署につなぐことでその役割を終えることになる。しかし高齢者の介護はその高齢者の生活そのものと不可分ではないがゆえに、その判断は難しいものがある。

何よりも介護保険のケアマネジャーにとって難しいのは、伴走型支援の重要性は分かったとしても、それが介護給付と結びつかないと、そのケアマネジャーにとってはタダ働きであり、そうでなくとも赤字の事業所経営からみると「それはやめてください」ということになり、つながり続けることはなかなか難しいのである。

それでも私は、こうした伴走型支援の実践から学ぶことは大きいと考えている。

※1厚労省「地域共生社会に向けた包括的支援と多様な参加・協働の推進に関する検討会」の最終とりまとめ

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