「ロングショート」というおかしなサービス(その1)
介護保険のサービスで通称「ロングショート」というサービスがある。関係者ならそれで充分通じるのであるが、新しい利用者などは説明が必要である。わかりやすく言えば「連続したショートステイ」ということになる。
ショートステイとは「短期入所」と言い、その名の通り短期間施設に入所するというサービスである。かつては在宅の三本柱と言われ、ヘルパー、デイサービスとともに在宅で暮らす高齢者を支援する重要なサービスとされてきた。介護者が何らかの理由で介護に関われなくなったり、介護者の負担軽減のため、短期間、高齢者に施設に入所していただくというものである。特別養護老人ホームやショートステイ専用の施設等がある。
ところが、今やショートステイは大きく様変わりしている。ショートステイのベッドの多くは長期に入所したままの、いわゆる「ロングショート」利用の高齢者で占められてしまっているのである。なぜか。理由は簡単である。みんな施設入所を希望しているが、施設には空きがないので、やむを得ずショートステイの部屋に入っているのである。だから短期で自宅に帰ることはない。最近では、ショートステイ施設で最後の見取り介護まで行っているのが現実である。
ケアプランセンターあすかが主に活動する紀南地域では一人暮らし高齢者の世帯が多いと言われている。それに伴いショートステイの利用は国、県を大きく上回っている。
短期入所生活介護の受給者一人当たりの利用日数の比較
紀南広域連合 三重県 国
利用日数 20.7 13.0 11.7
(「紀南介護保険広域連合第8期介護保険事業計画」より)
こうした数字を踏まえ同計画では「短期入所生活介護の長期利用等地域特有の介護保険サービスに係る課題について構成市町やケアマネジャー、介護サービス事業所と協議を行う場を設けるなど、適切なサービス利用を推進します。」としている。
「高齢者二人なら何とか生活できる、一人になっても自分でなんかできるうちは自宅で頑張る、でも最後は施設」これはこの地域の高齢者や家族の常識となっている。ケアマネジャーはこうした現状に対して、何とか在宅で最後まで支えていけないものかと頑張る。しかし最後は「ケアマネさんはそんなことう言うけどあんたが面倒みてくれるの・・」という家族の言葉には出さないが意見に押し切られ、ロングショートの施設探しに走ることになる。
さてここでは、同計画に記されている「適切なサービス利用を推進」が何を意味するかという点について、同保険者の担当者が今年2月14日集団指導の場で発言された内容も含めて考えてみる。こうしたロングショートは利用に際しては、その利用者の認定有効期間の半数を超えてはならない、ということになっている。ただし「連続した短期入所サービスが必要な理由書」を提出して保険者が認めることにより引き続きショートステイの利用が可能になる。(保険者によってはこのような理由書の提出は求められないところもある)ところが、集団指導の場でこの「『理由書』を認めないこともある」という発言があった。どうやら「適切なサービス利用を推進」するという意味は、ケアマネジャーが利用者の意向に基づき作成した「連続した短期入所サービスが必要な理由書」を認めないことで、利用抑制を図ろうとしているようにも推測できる。しかし、こうした対応では現場を混乱させるだけで、問題の根本的な解決にはならないと考える。
次回この問題に関して、私なりの解決の道筋について考えてみたい。