「ロングショート」サービスをめぐって(その2)
入所を希望する高齢者が、入る施設がないためショートステイのベッドを占有しているという、絶対的に不足している入所施設の問題をどのように考えるのか。大きく言えば二つの解決の方向がある。現在施設入所を希望し待機している絶対量からみれば、施設の量的確保は避けて通れないように考えられる。しかし、それにともなう介護保険料の高騰、また高齢者の真の願いが、地域での生活の継続ということであるとすれば、地域での住み方の多様化、在宅サービスの充実により解決するという選択肢もある。現在の高齢者や家族のニーズを実現するために施設を増やすのか、それとも在宅でも最期まで支えられる在宅ケアの体制を充実させるのか。国はこの問題に対して「団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途に、重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるように」という地域包括ケアシステムの構築を目指している。紀南介護保険広域連合の第8期介護保険事業計画のなかでも「基本目標1地域包括ケアシステムの推進」として挙げられてはいるが、ショートステイが施設入所を希望している人により占有されているというこの問題について、この地域がどのような方向性で取り組むのか明確にされてはいない。ロングショートの問題は、はしなくも国が提唱し、市町村が推進する地域包括ケアの実現がいかに困難かを示すものとなっている。
ケアマネジャーから見た、ロングショートに関する現状のいくつかの問題に触れておく。
その1は、ロングショートの利用者を担当した場合困るのが、利用者のモニタリングである。ケアマネジャーには、月1回、利用者の「居宅」を訪問して、利用者と「面接」し、利用者の心身の状況の変化やサービス提供に関してモニタリングを行わなければならないとされている。ところが利用者は「居宅」にはいないし、しかもコロナ禍のもとで「面接」ができない状況が続いている。この問題は一応「特段の事情」ということでクリアできるとしても、これがずっと継続しているというのもおかしな話である。
その2として、前回も記したようにこのロングショートの利用は、その利用者の認定有効期間の半数を超えてはならない、ということになっているが、「連続した短期入所サービスが必要な理由書」を提出して保険者が認めることにより可能になるとされている保険者がある。一方そうした理由書は必要とされていない保険者もある(新宮市等)。「要介護認定の有効期間のおおむね半数を超えない」という目安について厚労省の解釈通知によれば、「居宅サービス計画の作成過程における個々の利用者の心身の状況やその置かれている環境等の適切な評価に基づき、在宅生活の維持のための必要性に応じて弾力的に運用することが可能であり、要介護認定の有効期間の半数の日数以内であるかについて機械的な運用を求めるものではない」。(「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準について」の(8) 指定居宅介護支援の基本取扱方針及び具体的取扱方針㉒)」という解釈通知から考えても必ずしも理由書が必要ではないのでないか。ましてやこの理由書の提出にかかわって保険者がそれを認めないという判断はいかがなものかと考える。
その3は、介護者が急に外出が必要になったり、介護者自身が入院しなければならないといったとき、緊急にショートを利用しようと思っても先のような状況で空いている施設がないため利用が難しくなっている。こんな時、ケアマネジャーはいろんな施設に電話をかけ続け、断られ続け、胃の痛くなる経験をすることとなる。緊急用のショートステイ用のベッドの確保が必要である。