介護支援専門員の法定研修見直し(その1)
日本総研がまとめた介護支援専門員の法定研修見直しのための「介護支援専門員の資質向上に資する研修等の在り方に関する調査研究事業報告書」が公表されている。この報告書は令和3年度の厚労省の「老人保健健康増進事業」として行われたもので、「介護保険最新情報」Vol1073によれば、これは正式な決定ではないが「今後、当該事業の成果物等を踏まえ、介護支援専門員の法定研修のカリキュラム等の改定を予定しています」となっている。従来の厚労省のやり方から見ても、ほぼここに提案されている内容で決定されていくものとみて間違いはないのであろう。
こうした法定研修が現場の介護支援専門員にどれだけ役に立っているかに関しては、以前の「ケアマネつぶやき」のところでも述べたが、私としては極めて懐疑的である。そこでの学びと、費やされる負担を考えると「お仕着せの法定研修」は必要ないと考えている。しかし、ことお上が決める以上避けて通ることはできないのであるから、一応この報告書を通読してみた。ここではその中身について紹介し私見を述べてみることとする。
「養成研修の位置づけ」
まず注目したのは「養成研修の位置づけ」のところで述べられている次の文章である。
「現在の介護保険制度において、介護支援専門員が提供する支援は利用者の自己負担なく利用できる。これは制度・サービスを利用するために自己決定を支えるという特徴を踏まえ、そうした支援に国民誰もがアクセスできるようにするとの考え方にもとづくとされている。したがって・・・中略・・・法定研修の受講が義務付けられている。」同じ内容が別のところでは「法定研修は、国民が誰もが利用できる居宅介護支援の水準を一定以上のものとして確保するために『最低限必要な知識・技術の習得』を目的として位置づけられたものである。」これはある意味、現場の介護支援専門員として納得のいく説明である。しかし、財務省が主張し毎回の介護報酬改定で問題となっている介護支援専門員のサービスに一部負担が導入されたとしたら、この説明はいったいどうなるのであろうかと考えてしまう。
研修時間数は変わらず
今回のカリキュラムの改定は実務研修、専門研修Ⅰ・Ⅱ、主任介護支援専門員研修・同更新研修等法定研修全般にわたっているが、それぞれの時間数はこれまで通りとなっており、その一部の科目が新設されたり、削除されたりしている。
ただ、時間数について「オンライン研修環境の整備が進んでいることを念頭に、「時間数」はあくまで目安や程度等であるという位置づけを改めて明確にし、地域の状況や修得目標の達成状況等を踏まえ、都道府県がより柔軟に時間数の解釈を行えるように、「時間数」の定義、解釈方法等についてガイドライン上に明記する。(仮に時間数に満たない講義・演習時間数であっても、修得目標の達成が担保できるのであれば修了を認める等の具体的な例示を行うことも検討する。)」となっている。
「適切なケアマネジメント手法」を重視
今回の見直しの中で特徴的なのが「適切なケアマネジメント手法」を用いた研修がその中心に位置づけられているということである。報告書概要版によれば「根拠ある支援の組み立ての基盤となる視点(適切なケアマネジメント手法や科学的介護(LIFE)等)を学ぶ内容を各科目類型に追加」「高齢者の生活課題の要因等を踏まえた支援の実施に必要な知識や実践上の留意点を継続的に学ぶことができるように、適切なケアマネジメント手法の考え方を実務研修、専門研修Ⅰ・Ⅱ、主任介護支援専門員研修・主任更新研修に横ぐしをさして学ぶ科目類型を追加」となっている。具体的にカリキュラム案で、従来の「リハビリテーション及び福祉用具の活用に関する事例」「「看取り等に関する看護サービスの活用に関する事例」といった科目に代わり「脳血管疾患のある方のケアマネジメント」「認知症のある方のケアマネジメント」といった「適切なケアマネジメント手法」にしめされた科目にそっくり入れ替わっている。
ここでなるほどと思い当たるのは、厚労省が昨年の6月23日から今年の3月25日にかけ「適切なケアマネジメント手法」の普及推進のため7回にも及ぶ事務連絡を発出するという異常な入れ込み方が、今回の報告書につながっていることでようやく納得がいった。今後の介護支援専門員の研修においてこの「適切なケアマネジメント手法が」重要な枠組みを持つものになることは間違いないようである。
(続きは次回の「ケアマネのつぶやき」)