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ケアマネのつぶやき

わが内なる多様性を認めないもの

2022年6月18日(土)、19日(日)に神奈川県川崎市で開催された日本ケアマネジメント学会研究大会のテーマは「多様性のある社会の実現に向けたケアマネジメントの真価」であった。

多様性のある社会の実現は、ダイバーシティという横文字の氾濫にみられるように、今日、企業や自治体の多くでその重要性が指摘されている。ケアマネジメントにおいても多様性は重要な意味を持っていると考えている。

ケアマネジャーが支援する個々の利用者は、実に様々な営みの中で暮らし生きてきたのであり、家族も、その人が暮らす地域もさまざまであり、我々は利用者とひとくくりに呼ぶが、ただ一人として同じ利用者はいないのである。まさにそこにあるのは多様性そのものなのだ。

ところが介護保険のサービスを利用するにあたっては、こまごまとした規則や規制がある。ケアマネジャーはそれらをしっかり頭に叩き込んで仕事をすることが求められている。ここでは介護保険の規則や制度にケアマネジャーの注意が向けられることになりがちである。利用者の暮らしの多様性に目をつぶり、利用者の足に合わせた靴を提供するのではなく、利用者の足を靴に無理やり合わせていただく、というような思考になりがちである。介護保険制度の中で行われるケアマネジメントは多様性をめぐって危うさを抱えていることを指摘しなければならない。

 

朝日新聞デジタルVoice2022に掲載された名古屋大大学院の内田良教授の話は、多様性ではなく規則を守ることに意味を見出す社会的意識を生み出しているものについてふれた大変興味深いものとなっている。内田教授の指摘は「校則と職場の謎ルール 思考停止が招く政治への無関心」というテーマで、来るべき参院選に対する無関心についてふれたものであるが、ケアマネジメントと多様性について考えさせることが多いので以下に紹介させていただく 

「職場の「謎ルール」は学校の「ブラック校則」の延長線上にあるように思います。社会にはなぜ、こんなにも理不尽なルールがあふれているのでしょうか。ブラック校則は多くの学校にあります。そこでは理不尽に耐えるトレーニングをしているようなものです。そうした校則感覚を持ったまま大人になり、上から言われた通りに従う企業文化が作られていると思います。」「子どもにとって校則は法律のようなものです。世の中の土台を変えていく意識を高めることが学校の使命のはずですが、実際に教えているのは『ルールを守りなさい』ということ。自分で考え、意見を持ち、表明するプロセスがない。そのまま大人になり、理不尽な企業文化にも、どっぷりはまってしまう。」「こうした「ルール」は、―中略― 考える営み、自分の直感を伝えることの放棄につながっていると思います。」

 介護保険の制度にも、一人一人の高齢者の暮らしやニーズからみると随分おかしな規則がないわけではない。理不尽な規則をおかしいと感じ、自らの感性を信じ、既成の概念や規則に縛られない思考こそ、多様性の社会の基礎になるのではないであろうか。ケアマネジメントの実践は、わが内なる多様性を認めないものに対して問い掛けることから始まるのかもしれない。

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