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旧統一教会と自民党、そして家族

今話題の旧統一教会と政権与党の自民党との関係について、その共通する理念の一つに「家族」というキーワードがある。

旧統一教会の教祖であった文鮮明自らが著したと言われる「平和を愛する世界人として―文鮮明自叙伝―」に描かれた家族観を少し長くなるが紹介する。「家庭は、神が創造した最高の組織です」「家庭は世界平和のためのベースキャンプ」として旧統一教会が目指す神の国、世界平和の実現のための基礎が家庭にあると位置づけている。旧統一教会を「世界平和統一家庭連合」と名称変更した理由もこうした家族観によるものであろう。 

さらに「家庭は愛の営みだということもできます。天国に行ってその包みをほどいてみれば、その中から良いお父さんとお母さんが飛びだしてきます。美しい子供たちが飛び出して来ます。慈愛に満ちたお祖父さんとお祖母さんが飛び出してきます。愛の包みに包まれているところが家庭です」独特な表現ですが、目指すところの家族として描かれているのは伝統的な三世代の大家族の姿であり、別のところでは「私は三代が一緒に暮らす家庭を勧めています」と記されている。ところが「西洋ブームのため」「東洋的な家族観がだんだん崩れていっています」と嘆いている。

家庭が大事だと言うが、今回、国会で野党のヒアリングに対して答えた元信者の「今望むのは、家庭や人生を壊すような高額献金のない世の中だ。これ以上、私たち家族のように苦しむ人たちを出したくない。」という言葉にどのように答えるのであろうか。

 次に自民党の家族観を見てみよう。戦前の「教育勅語」を「日本人の伝統的な価値観だ」と評価し、封建社会の伝統的な家父長的家制度を理想とし、「日本の文化で一番大事なのは教育勅語に書いてある家族主義、家族と伝統を大事にすることだ」とした自民党の西田昌司参院議員の3月23日の参院憲法審査会での発言は記憶に新しい。

さらに、自由民主党の「日本国憲法改正草案」によれば憲法の前文に「日本国民は、国と郷土を誇りと気概をもって自ら守り、基本的人権を尊重するとともに、和を尊び、家族や社会全体がお互いに助け合って国家を形成する。」とし、さらに第24条前文に「家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される。家族はお互いに助け合わねばならない。」としている。

さらに、安倍前首相はUPF(天宙平和連合、世界平和統一家庭連合系のNGO)のスピーチで、次のように述べている。
 「UPFの平和ビジョンにおいて、家庭の価値を強調する点を高く評価いたします。世界人権宣言にあるように、家庭は社会の自然かつ基礎的集団単位としての普遍的価値を持っているのです。偏った価値観を社会革命運動として展開する動きに警戒しましょう」と。ここでいう「偏った価値観の社会革命運動」とは憲法に保障された「個人の尊重」に基づいて同性婚や夫婦別姓の実現を求める運動をさすものである。

 見てきたように旧統一教会の考える家族と自民党の特に保守的な人たちとの家族に対する考え方は、神の存在を除けば大差のないものである。社会的に問題のある組織として何十年も前から指摘されている「世界平和統一家庭連合」(旧統一教会)と自民党議員らの抜き差しならぬ関係の深さはこんなところにもあるのではないか。

以上のような旧統一教会や自民党の保守層が描く家族と、現実の日本の家族は大きく違ったものとなっている。伝統的な家父長制度を支えてきた三世代世帯は全世帯のわずか5.%にしかすぎないのである。その代わり急増しているのが単身世帯や夫婦のみの世帯である。いま日本における家族構成員の数は急速にその数を減らすと同時に家族の担う役割りは限られたものとなっている。さらにその多様性も現代の家族の特徴である。

旧統一教会や自由民主党の保守的な人たちの主張するように家族の役割を強調する考え方を家族主義という。家族主義では、家族がそのメンバーの福祉に主要な責任を負うべきと考える。ところが現実には、家族規模の縮小、その機能を低下によりかって家族が担ってきた子育てや介護等の問題に対して、社会保障、福祉を充実させることによりその問題を解決しようとする方向をもたざるを得なくする。「介護の社会化」や「社会による子育て」は不可避な流れであるが、家族主義は再びそうした役割を家族のもとに押し戻そうとしている。

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