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ケアマネのつぶやき

介護保険が危ない(その1)

 介護保険は3年に1回見直しされることになっている。社会保障審議会介護保険部会では次の令和5年度の介護保険制度の改定に向けての議論が始まっている。

9月26日に開催された部会には「給付と負担に関する指摘事項について」とする以下の7点が提示された。

  • 被保険者と受給権者の見直し
  • 補足給付の支給の見直し
  • 介護老人保健施設、介護医療院、介護療養型医療施設の多床室の室料を保険給付の対象外
  • ケアマネジメントに利用者負担を導入
  • 介護1・2への訪問介護・通所介護を介護保険給付から外し地域支援事業に
  • 利用者負担を原則2割に
  • 福祉用具貸与制度の見直し

これらはいずれもこれまでの財政制度等審議会、経済財政諮問会議の「新経済・財政再生計画改革工程表2021」等の意向を反映させる方向での提起である。

 部会の中ではこうした提起に対し、反対、あるいは慎重に対応すべきという意見も出されたと報道されているが、基本は介護保険の給付を制限し、国民の負担をより広く大きくしていこうという財務省や財界の意向を強く反映したものとなっている。

これらの「指摘事項」が今後の部会の議論でどのようになるかは不透明であるが、2000年にスタートして高齢者の介護を支えてきた介護保険を大改悪となる問題が多く含まれているので検討してみたい。

―その1 ケアマネジメントに利用者負担―

まずケアマネジメント(居宅介護支援)の有料化について考えてみる。ケアマネジャーが利用者に対して行うケアマネジメントに係る費用は居宅介護支援費と言われて保険の十割給付となっており利用者負担は0である。

この問題について令和4年5月の財政制度等審議会では「居宅介護支援事業所の約9割が他の介護サービス事業所に併設しており、『法人・上司からの圧力により、自法人のサービス利用を求められた』という経験を見聞きしたケアマネジャーが約4割いるなど、サービス提供に公正中立性の問題が存在することが窺える。〔中略〕 利用者が自己負担を通じてケアプランに関心を持つ仕組みとすることは、ケアマネジャーのサービスのチェックと質の向上にも資することから、第9期介護保険事業計画期間から、ケアマネジメントに利用者負担を導入すべきである。」と主張している。

 ケアマネジメント機関の公正中立の問題はこれまでも様々なところで言われてきたし、居宅介護支援事業所の運営基準等で規制がされてきた。こうした公正中立の問題やケアマネジメントの質の問題はケアマネジメントの有料化とは別の問題であり、有料化すればこうした問題が解決するということにはならない。(これまでも居宅介護支援事業所の公正中立の問題については「ケアマネのつぶやき」の中で何度もふれてきたので参照いただきたい)

介護保険法第二条第2項では「保険給付は、被保険者の心身の状況、その置かれている環境等に応じて、被保険者の選択に基づき、適切な保健医療サービス及び福祉サービスが、多様な事業者又は施設から、総合的かつ効率的に提供されるよう配慮して行われなければならない。」とされている。この条文を実現させるのがケアマネジャーの役割りである。その意味で、ケアマネジャーは利用者にとって、介護保険制度のサービス利用における入口に立つ不可欠な案内人であり、入口を有料化すると、低所得者を中心に利用控えが起きる危険性が想定される。さらにケアマネジャーのアウトリーチ機能が損なわれることにもなる。もちろんケアプランの自己作成という方法もあるが、現在のように複雑化した介護保険制度の下で居宅介護支援費の一部負担を支払いたくないということで自己作成はほぼ不可能に近い。

また、ニッセイ基礎研究所の三原岳氏はケアマネジメントの有料化のデメリットとして次のように述べている。

「ソーシャルワークの担い手として、ケアマネジャーが活躍できる余地は大きいにもかかわらず、居宅介護支援費の有料化はケアマネジメントを一層、介護保険制度の枠内に閉じ込めてしまうデメリットが想定される。言い換えると、ケアマネジメントのソーシャルワークとしての性格が減退し、その担い手としてケアマネジャーが活躍できる余地を小さくすることになりかねない。」

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