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ケアマネのつぶやき

97歳運転の車に女性はねられ死亡

11月19日夜、福島市で軽乗用車が歩行者をはねたあと信号待ちの車3台に衝突し、はねられた女性が死亡したほか5人がけがをした事故で、警察は、97歳のドライバーを過失運転致死の疑いで逮捕して、当時のいきさつを調べている。

報道によれば、97歳の容疑者は一人暮らしであったが、その地域では歌人として活躍しており、2年前の高齢者講習の検査においても認知症はなかったといわれている。親族により免許返納の話も行われていたというが、返納に至る前にこの事故となったのである。誰しもが驚いたのは97歳という年齢の運転ではないか。

過日、私自身も運転免許更新の高齢者講習に参加した、参加者が十数名いたがその中には「この人運転しても大丈夫かな?」と思わざるを得ない高齢者も散見された。しかし、教習所の教官は「運転ができないとこの地方では生活できないから・・・」といたって優しい対応をしていたのが印象的だったが、同時に「大丈夫なのかなあ」という不安も残った。

ケアマネジャーも利用者の免許返納をめぐって苦慮することは少なくない。返納して欲しいと考える家族とそれを拒否する高齢者というのがよくあるパターンである。都会に暮らす子供たちが親の車の運転を心配して、免許証の返納をすすめる。しかし公共交通の不便なこの地で暮らすお年寄りにとって、免許証の返納はたちまち生活に支障をきたすことになるから、おいそれと子供たちの説得に首を振ることはできないのである。だれも本人に返納の話をする人のいない認知症が進んできた一人暮らしの高齢者もいる。時には免許の返納をした後、利用者が意欲を失い、心身機能の低下をもたらしたというケースもある。

運転できないと困るのが通院と買い物である。だからと言って車に代わる公共交通機関が利用できるかというと、地方ではそうはいかない。1時間に一回のバスがあるかどうか、それにバス停まで歩いて行かねばならない。そしてバスのステップに乗れるだけの力が残っていない高齢者にとって、公共交通機関の利用は至難の業である。それでも人影のみえない空気バスは走り続けているのであるが。 

それではといって毎回の買い物にタクシーを利用できる高齢者はそんなにたくさんいるわけではない。それに地方ではタクシー運転手の高齢化、経営の悪化による廃業も相次いでいる。

地域で免許証を持っている人が助け合って高齢者の買い物や通院を支援したらいいという人もいるが、過疎と高齢化の進んだ地域ではそうした支え手に回るべき人すらその姿を消してしまっているのである。

「もうボツボツ免許の返納しなくては」と考えている高齢者は少なくない。でも、したくてもできない高齢者も多い。福島市の97歳の高齢者の事故が、明日この地で起きても不思議ではないと思う。

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