「適切なケアマネジメント手法」を考える その2
前にもこの「つぶやき」の中で「適切なケアマネジメント手法」(以下「手法」)についての私見を述べた。今回は、昨年9月から本年1月まで4回にわたって開催された日本総研主催の「『適切なケアマネジメント手法』実践研修」を受講した経験を踏まえ、私なりの意見をまとめてみた。
なおその内容に入る前に、国がこの「手法」を推進するために令和3年の6月から4年9月にかけて7回の事務連絡を発出していること、また、介護支援専門員の法定研修のカリキュラムが見直されるにあたり、実務研修から主任介護支援専門員更新研修までの介護支援専門員が受講する全法定研修に「適切なケアマネジメント手法」を位置付けられるということ※1。これらの経過から見えてくることは、国としては、今後の介護支援専門員の研修、教育さらにその実践の中でこの「手法」が極めて大きな位置を占めることになることは容易に想像される。
まずこの「手法」のねらいとするところは何かを確認しておこう。「本手法は、ケアマネジメントの職域で培われてきた知見を体系化し、例えば初任段階のケアマネジャーであっても、一定水準以上のケアマネジメントが実践できるよう、多くの事例に共通する知見の部分を、根拠に基づいて整理したものです。」そして「自分の実践を振り返り、抜け、漏れがないように確認」することができるとしています。さらに「様々な専門領域のそれぞれの分野の知見を体系的に整理しているので、他の職種にも示しやすく、結果的に多職種連携の推進に役立つもの」「つまり本手法のねらいは多職種連携なのです。」※2
さて、研修を受講した率直な感想は、この「手法」を使いこなすのはなかなか大変だなあ、というのが率直な感想である。この手法は「基本ケア」と「疾患別ケア」の2段階構成になっているが、「基本ケア」だけでも44項目が示されている。さらに「疾患別ケア」の「脳血管疾患1期」には22項目の視点が示されている。こうした視点にもとづいてアセスメントやモニタリングの際に活用していこうというのであるが、その項目(視点)の意味を理解し実践の中で使いこなすにはかなりの習熟が必要であろうと考えられた。
研修は4回にわたり、自分の担当しているケースについて「基本的ケア」を参考にして所定の「自己点検シート」にもとづき振り返りを行い、それにもとづいて実践を行い、その結果についてグループで検討するという繰り返しだった。こうした研修手法はおそらく介護支援専門員の法定研修の中でも採用される可能性が高いと考えられる。
その中で自分のアセスメントには抜けていた視点に気づきがあったり、それに基づいて新たにケアプランを見直してみる作業を行うこともあった。
これらの項目の中には「口腔内の異常の早期発見」「水分摂取状況の把握」等、ともすればアセスメントの中でもつい漏れてしまっている項目も含まれており、その意味では「自分の実践を振り返り抜け、漏れがないように確認」するという点でたくさんの気づきを得ることができたのは間違いのないところであった。
次にこの「手法」は「多職種連連携の推進に役立つ」という点については次のように考えられた。まずアセスメントにしろ、モニタリングにしろ、これらの項目にもとづき情報収集をしようとしてもケアマネ一人ではできないものもある。つまりこの「手法」にもとづいて利用者の情報を収集しようとする限り医師や看護師、介護職員等と連携して初めて可能になるという仕組みになっているのである。そうした意味で「多職種連連携の推進に役立つ」という意味は理解できるが、本「手法」をもって多職種連携が進むかどうかは、今回の実践の中では明らかにはならなかったと考えている。
今回のこの手法はケアマネジメントの標準化を目指したもので、ケアプランの標準化を目指すものではないとしている。しかし今後の使い方によっては、今回の手法の中で示された項目にもとづきAIを活用したケアプランの作成にまで結びつく可能性に大きく道を開くことになることは確かであろう。
また、3月16日には「適切なケアマネジメント手法」普及推進セミナー」(主催日本総研)が開催され、YouTubeでライブ配信されるそうである。だれでも参加できるそうなので興味のある方はご覧いただければと思う。
※1 4月28日に発出された介護保険最新情報Vol.1073
※2「『適切なケアマネジメント手法』活用ガイド」齊木大著 第一法規