1. HOME
  2. ブログ
  3. ケアマネのつぶやき
  4. 総合事業の「充実に向けた検討」を開始

つぶやき

つぶやき

ケアマネのつぶやき

総合事業の「充実に向けた検討」を開始

 ―――総合事業の充実は可能か―――

 総合事業とは、2015年(平成27年)4月に施行されたサービスである。この事業の趣旨として、厚生労働省は「総合事業は、市町村が中心となって、地域の実情に応じて、住民等の多様な主体が参画し、多様なサービスを充実することで、地域で支え合う体制づくりを推進し、要支援者等に対する効果的かつ効率的な支援等を可能とすることを目指すもの。」としている。そしてこのサービスを利用するのは、介護保険の要介護認定で要支援1・要支援2に認定された方と、基本チェックリストによりサービス事業対象者(生活機能の低下がみられ、要支援状態となるおそれがある高齢者)と認定された方とされている。

 始まってすでに8年を経過しているこの総合事業は必ずしも成果を上げているとは言えない。「多様な主体による多様なサービスの普及、という点で必ずしも十分に進んでいないとの指摘を受けている」と厚労省老健局の大西証史局長自身も認めている。

 具体的なサービスとして訪問型サービス(掃除・洗濯などの日常生活支援)と通所型サービス(デイサービス・機能訓練・集いの場など)がある。現状では、そのいずれも既存の介護保険サービス事業者が担う「現行相当のサービス」が大半であり、「住民主体のサービス」は広がっていない。厚労省が意図した「住民等の多様な主体が参画し、多様なサービスを充実する」ものとはなっていないのである。

 但し、総合事業の料金は介護保険で決まっている料金より低い料金で設定されている市町村がほとんどであるため、結果として従来の介護保険のサービス提供事業者とケアマネジャーは安い料金でそれぞれのサービスを提供することとなり、その意味では国の目指す介護保険料の削減という目的は達成することになっているとも言える。

  

国は、住民主体のサービスを推進するために市町村に生活支援コーディネーターを配置して、ボランティアや地域で生活支援・介護予防サービスの担い手を養成するとしてこの間は取り組んできた。しかし、これがなかなかうまく進んでいない。考えられるのは、住民主体とは言いながら、上から(行政主導)の組織化はうまくいかないという点は指摘されるところである。何より住民のニーズから出発し、それをいかに組織化していくかという技術と地域福祉に対する熱い情熱を持ちえないところでは、この成功はおぼつかないと考えている。

しかしそれよりもっと深刻なのは長年過疎地と言われてきた地域の現状である。民生委員のなり手がいないという話はよく各地で聞かれる。この地でも既存の地域組織がいろいろあったが一番最初に消滅したのが青年会といった組織であった。続いて婦人会が徐々に地域の中でその姿を消していった。今は老人会が新しい会員が入らない、役員の担い手がいないということで存続の危機を迎えている。長年続いてきた伝統的な行事の維持が困難となっている。そこにみられるのはいずれも「担い手がいない」という問題である。こうした問題は、決して限界集落や消滅集落と言われている地域だけの問題ではない。こうした地域においては、生活支援コーディネーターがいかに頑張っても、新しい担い手を作り出すのは困難なほど地域は疲弊してしまっていると考えざるを得ない。

厚労省は今年夏をメドに、具体的な手立ても盛り込んだ中間的な報告書をまとめ、総合事業の充実を計画的に進めていくとしている。さらにその先にあるのが、要介護1・2の人たちを総合事業に移行し介護保険の財政負担の抑制を目指していることは間違いない。総合事業の充実に向けた検討がどのようなものになるのか。注目されるところである。

関連記事