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ケアマネのつぶやき

ヘルパー派遣の依頼を断らざるおえない訪問介護事業所

紀南介護事業者連絡会(以下紀南ケアネット)は「訪問介護員の不足の現状に関する調査」を2023年8・9月に実施した。調査は紀南介護保険管内の訪問介護事業所管理者、居宅介護支援事業所のケアマネジャーを対象に実施した。

訪問介護の依頼にこたえられない現実

「過去一年間(概ね)でヘルパーの訪問が困難で依頼を断ったことがありますか」の問いに対し、「あった」との答えが8割強。

訪問介護事業者管理者 81.8%

ケアマネジャー       85.7%

合 計            84.7%

さらに、その回数は訪問介護事業者管理者、アマネジャーともに「3~5回」あったという回答が最も多くなっている。

そうした原因について訪問介護事業者管理者で回答のあった訪問介護事業所のほとんどの管理者が「ヘルパーが不足しているため」と答えている。「現在何名程度のヘルパーが不足しているか」という問いに対し「3~4名」不足していると回答した訪問介護事業所がもっとも多かった。

訪問が難しい地域がある

訪問困難な地域として熊野市の「紀和町」「神川町」「育生町」「二木島町」「遊木町」「甫母町」が挙がっている。「山間部等の訪問の場合、移動時間とこれに伴う費用が事業所にとって大きな負担となる。」といった意見がある。同じ介護保険料を支払いながら住む地域によってサービスが受けられないとすれば大きな問題であると考えられる。 

土日、夜間、早朝の時間帯の訪問が難しい

「土日、夜間、早朝に対応できるヘルパーが少ないため依頼にこたえられないことが多い」との意見が訪問介護管理者から上がっている。同時にケアマネジャーからは、「ケアプラン立案のさい、ヘルパー訪問の必要性を感じても、ヘルパー事業所の受け入れが可能かを先に考えなければならない」「利用者に我慢してもらっている」等本来必要なケアプランが作成できない悩みが多数上がっている。

同じように、朝夕のオムツ交換や食事介助は提供する時間帯が重なるため、利用者に「訪問時間をずらしてもらっている」。また、ゴミ出しの仕事は曜日が集中するため対応ができないので「いったんヘルパーがゴミを持ち帰って出している」等、利用者にとって必要な時間帯にサービス提供ができない悩みも多数寄せられた。

一日複数回の訪問頻度の高い依頼にこたえるのは難しい

重度な利用者の場合、一日2~3回の訪問が必要な場合があるが、一つの事業所でそれに対応することは困難となっている。そのため複数の事業者で組んで対応しているケースが多くなっている。同時にこうした対応はケアマネジャーの調整に係る負担を大きくさせている。

ヘルパーの高齢化

新しいヘルパーの補充がなく、ヘルパーの高齢化が進んでおり、「長年頑張ってきたヘルパーが引退するとこの先どうなるのか不安がある」との訪問介護事業所管理者の意見がある。            

紀南ケアネットが令和2年10月に実施した「介護職員年齢構成調査」によればその時点で訪問介護事業所の60歳以上の職員が41%となっていたが、現実はさらに高齢化が進んでいると推定される。こうした高齢化に伴い現場では「身体介護ができる人が減っている。」「入浴介助のお願いができない」との意見が複数寄せられた。

登録ヘルパーの「年収の壁」問題

登録制(パート)のヘルパーが多いのが訪問介護の現場である。そのため「配偶者の扶養に入っているため労働時間が限られており、年末には働ける人が少なくなる」という問題は現場の管理者の共通する頭の痛い問題として指摘されている。

事業所存続の危機、そして介護難民

ヘルパー不足は深刻で多くの訪問介護管理者が「働いてくれるヘルパーがいないのでいつまで事業が継続できるか不安」を抱きながら、日々利用者のニーズに応えるためやりくりしている現実がうかがえる。同時に職員の中からも「人員不足のため長期休暇が取れない」等の厳しい状況が語られている。

ヘルパー不足は全国的にも指摘されているところであるが、この地域における訪問介護の現実は、「利用者にとって必要なサービスが受けられない」「十分な支援が組めず、在宅生活が継続できず、やむを得ず施設入所を選択する場合がある」等介護難民と言える人たちが存在していること、そしてそうして現実は地域包括ケアの崩壊につながることになるであろう。さらに、このままヘルパーの不足が続けば、訪問介護という制度はあっても利用できないサービスとなり、ひいては介護保険そのものの存続を危うくすることになりかねないことが今回の調査から考察される。

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