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認知症の親の銀行口座から子供がお金を引き出すことは可能か?

 正解は、親が認知症になった場合、子どもでも親名義の資産を勝手に動かすことはできない、というのが正解である。銀行により認知症と判断されると、その銀行口座が凍結され、預金を引き出すことも簡単にはできなくなるのである。

2021年2月、全国銀行協会は「金融取引の代理等に関する考え方及び銀行と地方公共団体・社会福祉関係機関等との連携強化に関する考え方」という文書を発表した。それによると「認知判断能力が低下した顧客との取引をする場合、民法上の法定後見制度である補助人、保佐人との同意を確認のうえ本人との取引を行う、あるいは成年後見人や任意後見制度にもとづく任意後見人を介して、代理取引を行うのが一般的である」としている。

 たとえ息子や娘であろうと認知症になった親の預金を引き出することはできないから、そのような場合は法定後見か任意後見のいずれかの手続きを行っておくことが求められるのである。ただし、そうはいっても成年後見制度が十分普及していない現状で、銀行も名義人が必ずしも認知症かどうか確認できない時は、現実には子供による口座からの引き出しは行われているようである。ただしあくまで例外としての話である。

 銀行としては、認知症になった名義人が、自身の資産管理を適切に行えず、口座が不正利用されるリスクを警戒するため、また、認知症の人の預金が引きだれ、それが親族間でトラブルになり、その取引が無効だと銀行が訴えられることを避けるためにも預金口座の凍結を行うこととなる。

銀行として、名義人が認知症と判断するのは次のようなケースだと言われている。たとえば、名義人やその子どもが、名義人が認知症にかかったことを銀行側に報告した場合、また「銀行に名義人本人が来られない」「自分の名前や生年月日を言えない」といったことを銀行が確認すると「名義人が財産管理をする適切な能力を損なっている」と判断し、銀行はその時点で口座凍結を開始するそうだ。

 今や認知症の発症率は、80代後半になると男性35%・女性44%と増加が見られ、さらに90代の後半ともなると、男性の51%・女性の84%もの割合で認知症が発症すると言われている。後見制度の利用は誰しもが考えておく必要がある。

 後見制度には法定後見と任意後見の2種類がある。法定後見はすでに本人の判断能力が不十分になった場合、家庭裁判所によって選定された成年後見人(後見、補佐、補助)が本人に代わって支援する制度である。これに対して任意後見は本人がまだ十分判断能力を有している段階で、あらかじめ本人が希望する任意後見人と契約(契約は公証役場で)しておき、本人の判断能力が困難になった時点で支援を得られるという制度である。

 認知症を心配する人は、是非この際任意後見制度の利用をお勧めする。

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