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つぶやき

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介護保険制度

総合事業の行方

 昨年12月7日「介護予防・日常生活支援総合事業の充実に向けた検討会における中間整理」が公表された。

介護予防・日常生活支援総合事業(以下総合事業)は、市町村が中心となって、地域の実情に応じて、住民等の多様な主体が参画し、多様なサービスを充実することで、地域の支え合い体制づくりを推進し、要支援者等に対する効果的かつ効率的な支援等を可能とすることを目指すもの、とされてきた。

ところが、現実に地域で起こっているのは、住民等の多様な主体参加はほとんど進まず、安い料金で既存の介護事業所のヘルパーやデイサービスの職員が総合事業の担い手となっている。つまり、介護現場に安上がりの仕事をおしつけ、要支援1・2の利用者のサービス利用を制限し、結果として介護に係る費用を抑制しているという現実である。

 さすがに国も、進まない住民等の多様な主体の参画という現実を、何とかしなければならないということで「介護予防・日常生活支援総合事業の充実に向けた検討会」を設置し今回の報告となったのである。

 国がこの総合事業にこだわるもう一つの理由がある。介護保険の財源対策として、要介護1・2の利用者の訪問介護と通所介護サービス利用を介護給付から外してこの総合事業に移行しようと、かねてから意図してきという経緯があるからである。

 では今回の「検討会における中間整理」で何が明らかにされたのか。

「現在、総合事業は介護サービス事業者等による専門家が主として実施している」 「本検討会では、総合事業を、介護保険事業運営する市町村の立場からではなく、地域に暮らす高齢者の立場から・・・検討を重ねてきた。」そういう意味で「大きな発想の転換によるフルモデルチェンジを促すもの」としている。それはある意味納得のできる指摘である。もともと総合事業の始まりは、住民・高齢者のニーズから出発したというものではなく、介護保険のサービスの利用者である要支援の利用者を勝手に総合事業に付け替え、介護予防や住民参加をうたいながら、その費用の削減を隠された狙いとして始まったものだから、検討会のそうした指摘はある意味的を得たものである。

「中間整理」では「総合事業の充実に向けた基本的な考え方」として、「高齢者の尊厳と自立した日常生活を地域で支えていくためには、地域に暮らす高齢者の立場に立ち、市町村が中心となって、医療・介護職がより一層その専門性を発揮しつつ高齢者を含む多世代の地域住民、地域運営組織、NPOや民間企業などの多様な主体を含めた地域の力を組み合わせるという視点に立ち、地域をデザインしていくこと」その意味で「総合事業を、地域共生社会を実現するための基盤と位置づけ」る、としているが、こうした基本的な考え方は極めてまっとうな主張で誰も文句の付け所のないところであるといえる。

さらに「総合事業のための具体的な方策」としていくつかの考え方や提案がみられる。ただし、全体として「具体的な方策」と題している割にその内容は考え方や抽象的な表現にとどまり、今後「多様な事業の在り方の例示」する。「新たなサービス。活動モデルの例示」するという表現にとどまっている。今回の報告は「中間整理」であるのでこれはやむを得ないのであろう。

今回の最も重要な論点の一つであった、どうすれば多様な主体が総合事業に参加できるようになるか、という点でどのような提案がされるのかが注目された。その点では、市町村・国・都道府県の役割が示されるとともに、生活支援体制整備事業の活性化、生活支援コーディネーターへの期待等が記されているが、これらを読む範囲ではあまり期待できそうな具体的な提案はみられない。

「基本的な考え方」の中で「市町村は、地域の高齢者にサービスを提供するという立場を超えて、地域の多様な主体が持つ多様な価値判断を踏まえつつ、ファシリテーションの役割を担いながら多様な主体との対話を重ねることで規範的統合をすすめるとともに・・・・地域づくりのプロジェクトマネジャーとしての役割を発揮することが求められている。」この総合事業の成否はまさにこうした市町村の役割にかかっているという点では指摘の通りだと思っている。問題は今の全国の市町村にこれを理解し情熱をもってと取り組むスタッフがどれほどいるのだろうかという疑問が残る。少なくとも私の身近に存在する市町村にそれを期待することは無理があると考えざるを得ない、

もう一つの課題は、今過疎・高齢化が進んでいる地域に、そんな力が残っていないという厳しい現実である。こうした地域の大きな悩みはいろんな面で担い手がいないという問題である。長年受け継がれって来た地域の伝統行事や、イベントの担い手がいないという理由で次々と中止になっている。既存の婦人会や老人会といった組織も同じような理由で存亡の危機を迎えているのである。こうした中で住民自身の手による活動に期待することは大変難しいといえる。

 さらにもう一点、介護予防という点について指摘したい。現在要支援の認定を受けた人たちがこの介護予防の対象者とされている。ところが、介護認定申請をして要支援と認定された方が希望しているのはヘルパーさんの利用であったり、デイサービスに行きたいというという希望である。「介護予防をしたい」として介護認定申請をする人はほとんどいない。現在の介護保険の枠組みの中での介護予防というやり方は、その入り口でボタンを掛け違っているのである。私に言わせば、介護予防を行い、少しでも元気な高齢期を実現したいとして介護予防を行いたいのであれば、介護保険とは別に行うべきである。

その他、「高齢者が日常生活をおくるうえで、移動・外出支援は重要な課題」、「継続的利用要介護者が利用可能なサービスの拡充」、「目的指向型ケアマネジメントの推進」等その具体的な中身に何が盛り込まれるのか気になるところであるが、今回はあくまで「中間整理」ということなので最終報告がどのようなものになるか関心をもって見ていきたい。

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