抗議が相次ぐ、訪問介護の単価引き下げ
―令和6年度介護報酬改定をめぐって2―
令和6年度の介護報酬改定が示されたが、その中で皆がびっくりしたのが訪問介護の単価の引き下げであった。他のサービスは軒並みわずかではあるが引き上げられている中で。訪問介護の単価が引き下げられたのを見て目を疑った関係者は少なくないであろう。
早速、日本ホームヘルパー協会・境野みね子会長は「経営状態が悪化し、持ちこたえられない事業所が増えるのではないか。憤慨している。あまりに酷い」「国の考えていることが分からない。地域で高齢者を支える訪問介護事業所を潰そうとしているのかな…。我々はいらないと言われているのかな…。悔しいし切ない」(2024年1月30日介護ニュースJoint)と述べている。
さらに2月1日には、引き下げに抗議しその撤回を求める「緊急声明」を発表したのが「ウイメンズアクションネットワーク」(上野千鶴子理事長)「高齢社会をよくする女性の会」(樋口恵子理事長)「日本障碍者協議会」(藤井克徳代表)「きょうされん」(斎藤なお子理事長)「ケア社会をつくる会」の5団体であった。さらに全国ホームヘルパー協議会と日本ホームヘルパー協会が厚生労働省へ抗議文を提出したと伝えられている。
介護保険のサービスの中で最も人材不足で困難を抱えているのが訪問介護である。東京商工リサーチによれば、2023年の「老人福祉・介護事業」の倒産は122件で過去2番目を記録した。このうち、訪問介護事業者の倒産は過去最多を大幅に上回る67件に達した、と発表している。処遇改善加算で多少の配慮をしたとはいえ基本単価を引き下げたのでは訪問介護事業所の経営をますます困難にすることは間違いない。
介護報酬改定の一つの柱が「地域包括ケアシステムの深化・と推進」としているが、地域包括ケアの一角を支えているのはホームヘルパーさんたちである。今回の改定は、その訪問介護事業の基盤を危うくし、結果として地方の在宅介護現場の崩壊につながりかねないと考える。淑徳大学総合福祉学部 結城康博教授は「これでは一部の地域を除き、地域包括ケアシステム、在宅介護は机上の空論となる道を突き進むだろう。なぜ今、訪問系サービスの基本報酬だけが引き下げとなるのか。全く理解できない」(2024年1月23日介護ニュースJoint)と述べている。