在宅で最期まで看取ることができてこそ、それが訪問介護
人材不足による訪問介護事業所の困難が伝えられている。こうした中で、最近事業所の閉鎖を決めたある訪問介護事業所の経営者であり自らヘルパーとして第一線で仕事を担ってきたYさんにお話を聞きました。
――訪問介護事業所としてYさんが目指してきたものは何だったのでしょうか。
事業所を立ち上げる前からいろんな介護の現場で働いてきました。そんな中で、まだまだ在宅で頑張れると思う高齢者が施設に入っていく。最後まで家での生活にこだわっていた人も、自宅での最期が困難という理由で施設入所となる高齢者をたくさん見てきました。
そんな中で、何とか最期まで高齢者が在宅で暮らし続けられるようにしたいという思いの人たちが集まってくれて今の事業所を立ち上げました。
――訪問介護を行ってきて、特に思い出に残るようなことがありますか。
高齢のご夫婦で、認知症と身体が不自由になった奥さんを、ご主人が最期まで自分が家で看てやりたいと強く希望されたご夫婦の支援をさせてもらったことでした。ご主人が献身的に介護されており、私たちヘルパーも1日3回訪問させていただきました。普段はコミュニケーションも困難で、意思表示も十分できない奥さんでしたが、最期に枕元で、ご主人と私たちに対して両手を合わせて「おおきに ありがとうございました」といわれたことは、強く心に残りました。そしてご主人もご自宅で最期を看取らせていただきました。
この経験は、かかりつけ医と訪問看護師さん、そしてヘルパーが力を合わせれば、在宅での見取りは可能だという強い確信を、事業所のヘルパー全体で確認することができたことでした。在宅で最期まで看取ることができてこそ、それが訪問介護だと思っています。
――訪問介護事業所を閉鎖されることになった経過をお話しください。
一番頼りにしていたヘルパーが亡くなったり、病気で仕事ができなくなるということが起きてしましました。何とかしなければとハローワークに求人の申し込みをし、いろいろなところにヘルパーの募集を行いましたが、新たに勤めていただく人を確保することはできませんでした。
それでも、このまま事業をつぶすわけにはいかないと自分が遮二無二なって働いてきました。 そんな中で、徐々に自分も余裕がなくなり、これではいいケアはできないな、という思いが強くなりました。最終的に閉鎖を決めたのは、いろんなケアマネさんからヘルパー派遣の依頼をいただくのですが、その度に「申し訳ありませんが無理です」とお断りすることが続きました。そして、これでは事業所としてだめだろうと考えるに至り事業所の廃止を決めました。
――今皆さんに伝えたいことがあるとすれば。
今回事業所の閉鎖という大変残念なことになりましたが、ヘルパーさんがいないという状況は内だけの問題ではありません。近い将来どの事業所も訪問介護を続けることが難しくなる可能性があると思っています。介護の必要な高齢者がいてもヘルパーがいないということです。そのためには一つ一つの事業所だけで対応していても無理があると思っています。そのためには事業所同士としても助け合いネットワークを作っていく必要があると思っています。
それと、行政ももっと真剣にこの問題に取り組んでいただきたいと思います。また地域には元気なお年寄りもたくさんいます。そんな高齢者にゴミ出しや買い物等の生活支援をやっていただければ、ヘルパーはもっとその専門性を発揮できるのではないかと思っています。