「ケアマネジャーの仕事の範囲はどこまで」 その4
―結論、そして相談援助職としてのケアマネジャーの新しい役割―
「ケアマネジャーの仕事の範囲はどこまで」という問題の結論を求められるとすれば、ケアマネジャーの仕事の範囲を明確に規定することは不可能であるということである。介護保険のケアマネジャーは第一義的には利用者の介護、特に介護保険の給付にかかわるのであるが、まじめにその仕事に向き合えば、その利用者の生活全般にかかわっていかざるを得ないのであり、そこにあるのは個別性と多様性に満ちた利用者とそれを取り巻く環境である。百人の利用者がいれば百通りの関わり方、支援の方法があると言っても過言ではない。
この問題をいろんな側面から考えてきたが、その中で見えてきた二つの課題を最後に提示したい。
その一つはケアマネジャーの発信力である。これまでふれてきたように、誰かが支援しないと高齢者の生活が立ちいかないため、ケアマネジャーが関わらざるを得ないといった場面や事柄は少なくない。したがって「本来これはケアマネジャーの仕事ではないのでは・・・」と思いつつ担っている仕事の中には、本来地域や社会的に対応されるべき課題が宿っている。ケアマネジャーはとりあえずその解決のために動くのであるが、同時にその問題を社会的にあるいは地域の中で解決できるように発信していくのもケアマネジャーの仕事だと考える。そうした発信が地域の問題として取り上げられ、検討される中で地域包括ケアが高齢者にとって意味あるものとして充実されていくのであろう。
この問題を考える上で二つ目に重要なことは、こうしたケアマネジャーの仕事の広がりをしっかりと制度の中で位置づけていくことこそが必要ではないかと考えている。先にも触れた一人暮らしの高齢者の増加などを背景に、病院や施設に入る際の保証人や手続き、葬儀等死後の問題も含め、家族や親族が担ってきた役割を果たす人がいない高齢者が増え、誰が担うかが課題になっている。こうした中で、頼れる身寄りのいない高齢者が直面する課題を解決しようと、政府が新制度の検討を始めているという。であるとするならば、そうした役割を担う仕組みの中にケアマネジャーをしっかり位置づけることが必要ではないか。どのような新しい制度や窓口を作るよりも、現在要介護高齢者の身近に位置し、アウトリーチ機能をいかんなく発揮しているケアマネジャーこそがそうした役割を果たしうる現実的で最も有効な解決の一助となると考えている。
現在シャドーワークと言われているケアマネジャーの仕事の広がりを、積極的にケアマネジャーの仕事として位置づけ、それにふさわしい処遇改善が必要であると、私は考えている。もしそれを介護保険の中で考えるとすれば、居宅介護支援費の独居高齢者加算というものを設けることは十分意味のあることだと考える。