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ケアマネジメントと家族支援―Ⅲ

―葛藤を抱えた家族の支援―

 これまで家族支援の必要性、特に家族をめぐる規範意識についてふれてきた。ここで具体的な家族支援について、私自身のこれまでの経験も含め、特に家族支援が困難だと考えられたケースの支援の具体的なポイントを述べてみたい。

 こうした支援が困難なケースには被介護者と介護者の意見の違う場合、家族の中に様々な理由から葛藤や対立を抱えた家族、共依存と思える家族、長期にわたる認知症の介護で疲弊する家族介護者、家族の介護か仕事かで悩む仕事を持つ介護者等多くの事例がみられる。それぞれのケースに対する支援はそれぞれの対応があるがそうした支援の多様性にかかわらずいくつかの重要な視点があるのではと考えている。

 今回は家族の中で葛藤や対立を抱えた家族の対する支援を中心に考えてみたい。

 まず介護者やその家族のアセスメントの必要性についてである。一般的には介護者のこれまでの介護経験や就労、精神心理面を含む健康状態等必要なアセスメントを行うことになるが、こうした家族内に葛藤を持つ家族の場合、その家族がたどってきた歴史の把握は不可欠である。高齢者家族にはその家族固有の歴史がある。中には子供の時、親から虐待を受けた子供が、親の介護に向き合わなければならない様なケースもある。

 介護者や家族のアセスメントについて私は家族療法のいくつかの考え方は大変参考になると考えている。家族療法は、家族をシステムとして考える。「家族というのは一つのシステムであって、システムの問題は、その個人が一人で作り出すものではなく、システムを構成する要素間、つまりシステム構成員の関係が作り出すという考え方」。また、ある事実について「一つの絶対的な現実がある」という考えではなく「それぞれの人に主観的事実がある」「社会にはそれぞれの主観的事実が人数分存在している」と考える社会構成主義的な認識論はケアマネジャーにとっても有効であると考えている。

 こうした葛藤や対立を抱えた家族は長い年月を経て今の家族という関係性を作り出しているのであるから、そう簡単に解決され、ことがうまく進むことは期待できにくい。経験的に言えば、まず家族関係の根本的な解決は無理だと思った方がいい。しかし、現実に介護が必要な状況は変わらず、当面の対応が求められる。そこでは介護保険を使った必要なサービスを提案し実践することとなる。しかし、そのサービスをめぐっても意見の食い違いが起ることもありうる。このときケアマネジャーはその双方から粘り強く意見を聞き可能な限りの調整を図らねばならない。ケアマネジャーが双方に働きかけ、本人と家族が対等に向き合い、本人たちがそのずれを調整していくという媒介機能を図ることとなる。そうした媒介機能を果たすために最も大切なことの一つはケアマネジャーのポジショニングにあると考えている。対立する家族の中にあって、ケアマネジャーは家族全体のシステムを視野に入れた中立的な立場をとる必要がある。言葉を変えれば、家族間の対立に巻き込まれないように注意しながらこの媒介機能を果たすことになる。このポジショニングがうまくいっていないと、ある時、突然一方の家族から「ケアマネジャー交代を」告げられることも珍しくない。こうしたケアマネジャーの働きかけにより、当面する介護問題の解決を図り、ひいては利用者と家族の「新たな出会い」ができれば、双方にとって有益な新たな家族システムの形成を意味することができる。また、ケアマネジャーが家族システムに何らかの働きかけをする場合、ケアマネジャーの仕事は、気づかないうちにケアマネジャー自身が子供役や孫役といった「擬似家族」の役割をとってしまい、家族の力動を誤った方向に持っていってしまう危険性もはらんでいることを注意する必要がある。家族支援を考える場合、ケアマネジャーのポジショニングは重要な視点となる。

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