1. HOME
  2. ブログ
  3. ケアマネのつぶやき
  4. リスク管理の危うさ

つぶやき

つぶやき

ケアマネのつぶやき

リスク管理の危うさ

インフルエンザやコロナウイルスの流行で多くの病院や施設は面会制限を厳しくしている。この面会制限はそれぞれの病院、施設の感染予防のため、つまりリスク管理の結果である。
「15分間だけ」「面会は一人だけです」という病院は少なくない。国は「人生会議」といい、もしものときのために、自らが望む医療やケアについて前もって考え、家族等や医療・ケアチームと繰り返し話し合い、共有することを目指しているが、こうした面会制限のもとでは、この人生会議もほとんど不可能になっている。
施設の玄関先でアクリル板越しの面会は可能というが、難聴の高齢者にとって意思の疎通は不可能に近い、職員が立ち会って通訳してくれる施設もあるが、利用者にとっても面会をする家族にとってもなんとも歯がゆい思いがする。
医療者や介護職員にとって、患者や利用者の尊厳の尊重は最も基本的で重要な価値、倫理である。ところがこうした入院患者や施設の入所者の尊厳やそしてその人権は、感染予防という名目でいとも簡単に置き去りにされてはいないであろうか。
在宅においてもそうしたジレンマはある。認知症で徘徊のおそれのある利用者を、鍵をかけて自宅に閉じ込めるといった事例を経験したケアマネジャーは私だけではないと思う。しかし、認知症の方でもそうした行動に理由がないわけではない。そうした利用者の尊厳を守りながら安全を確保する努力が求められるのであるが、そうした努力を惜しんで安易に利用者を管理しようとしてはいないであろうか。
学校という組織はとりわけ子供たちを管理することに長けているようである。その象徴がブラック校則と言われるものである。「靴下は白のみ」「スカートの丈はひざ下で」「下着の色は白」「髪の染色禁止」といった校則にはどんな意味があるのであろうか。服装にしろ、髪型にしろこれらは個人のアイデンティティーに係るものであり、個人として尊重されなければならないものだと考える。これは子供だからと言って、制限されてもいいというものではないはずである。こうした校則により子供たちを縛り付けることによって管理はしやすいのかもしれないが、どれほど教育的意味があるのであろうか。
教育現場の問題はさておくとしても、医療や介護の現場において患者や利用者の安全のためという名目で、そうした人達の行動や生活を制限し、結果として個人としての尊厳を無視してはいないか。その内実は医療者や介護者が「自分の身を守るために他者を縛り付けるもの」になっていないであろうか。リスク管理という名目で行われる行為にはそうした危うさがあることを心しておかねばならない。

関連記事