現場のケアマネジャーが語る
知って得する介護保険
「ちょっとした住宅の改修と福祉用具で快適な生活が」
介護保険というと寝たきりや認知症になったとき利用するもの、と思っているお年寄りは少なくありません。ケアマネジャーから見ると、介護保険のサービスを利用すればもっと楽に生活できるのに、と思うような方でも「私はまだまだ介護保険なんか・・・」とおっしゃる方に出会うことがあります。
Iさんは一人暮らしです。歩いたり、立ち上がったりする動作にやや時間がかかるものの何とか一人での生活を送ることができていました。名古屋に嫁いでいる娘さんの依頼でIさんを訪問すると「私はまだまだ介護保険なんか必要ありません」と取りつく島もない返事。それでも、娘さんが心配していること、あれこれと雑談をしている中で、Iさんは最近お風呂に入っていないこと、勝手口の出入りに40cm程の段差がありそれがつらい、と語ってくれました。近所のお年寄りがお風呂に入ってそのまま亡くなっていたことがあったそうで「風呂に入らなくても死にわせんから」と笑っていました。その日は、それでIさん宅を辞し、娘さんにその結果を報告させていただきました。
後日、娘さんが実家に帰る日に合わせて再び訪問させていただきました。最初は、介護保険の申請をしぶっていたIさんでしたが、娘さんの説得で何とか申請だけはしよう、ということになりました。
それから何回か訪問をする中で、勝手口に一段踏み台をつけ、手すりをつけたら楽に上がり降りができますから、と説明させていただきましたが、もうひとつ乗り気でない様子。それではと踏み台を持って行って、実際に上がり降りをしてもらいました。すると、「これはいい、楽になる」と以外にもあっさりと勝手口の改修を了解してくれました。このときを逃したら、と入浴のとき浴槽の上に渡す入浴ボードを置いてみて、浴槽に入るときは立ったまま入るのではなく、この浴槽ボードにお尻をおろしてそれから手すりをつかまって入るようにすれば安全ですから、と説明するとこれも「そんならついでですからやってみてください」と了承してくれました。
その後、「随分久しぶりにお風呂に入った、気持ちよかったで」とIさんから電話をいただきました。そんなお話を聞かせていただくときケアマネジャーとしては、「ヤッター」と心のなかでガッツポーズ。
Iさんの介護保険の利用は、勝手口の踏み台と手すり、それにお風呂につけたL型手すりと入浴ボードだけです。それだけでもIさんの一人暮らしは大分楽なものになったことは確かだと思っています。そんな介護保険の利用の仕方もあるのです。