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ケアマネのつぶやき

増える一人暮らし高齢者の現実

厚生労働省が7月4日に公表した昨年の国民生活基礎調査によれば、高齢者世帯の世帯構造は、「単独世帯」が 873 万世帯(高齢者世帯の 51.6%)と最も多く、次いで「夫婦のみの世帯」が 756 万 2 千世帯(同 44.7%)と なっている。

さらに、今後の人口や世帯の状況を予測した国立社会保障・人口問題研究所の「日本の世帯数の将来推計(全国推計) 2018(平成 30)年推計 ― 2015(平成 27)年~2040(平成 52)年 ―」によれば、世帯主が65 歳以上の世帯数について家族類型別に2015 年と2040 年の値を比較すると、顕著に増加するのは「単独世帯」の1.43 倍(625 万世帯→896 万世帯)となっており、さらに世帯主が75 歳以上の世帯については,「単独世帯」は1.52 倍(337 万世帯→512 万世帯)となっている。 こうした数字から見えてくるのは一人暮らしの高齢者世帯が当たり前というのが日本の高齢者のこれからの暮らし方として浮かんでくる。

 そこで問題となるのが高齢者の社会的孤立という課題である。その課題が最も先鋭化した姿として我々が見出すのが「孤立死」「孤独死」と呼ばれる、社会的孤立がもたらす人生の最後の姿である。

 孤独死(ここでは「孤独死」という表現を用いる)というものには明確な定義があるわけでなく、公的なデータも存在していない。こうした中で「東京都監察医務院で取り扱った自宅住居で亡くなった単身世帯の者の統計(令和元年)」は東京都のみのデータではあるが孤独死をめぐる深刻な事実を読み取ることができる。2013年から2019年の期間中に東京都のみで1,000件近く孤独死が増えている。 もちろん孤独死は高齢者に限った話ではないが、特に65歳以上になる男性の高齢者の孤立死が多く、孤独死の増加率が一番高かった年代は75~79歳で、2015年度と比較すると2019年度は1.216倍に増加している。

 また、孤独死をめぐってこんなデータもある。「身寄りがなく経済的に困窮して亡くなった人の葬祭費を行政が負担するケースが増えている。厚生労働省によると、2021年度は全国で4万8622件(速報値)と過去最多となり、この10年で約1万件増加した。地域や血縁のつながりが薄れる中、高齢化で年間140万人が亡くなる「多死社会」が到来しており、引き取り手のない『無縁遺骨』が増えている。」(朝日新聞デジタル2022年12月29日)

 こうした増加する高齢者の孤独死の背景には「単独世帯」の増加があることは間違いがない。

もちろん一人暮らしの世帯のすべてが問題であるというわけではない。夫に先立たれて「今は自由、寂しくなんかない」という高齢の女性がいることも事実であり、「老後はおひとりさまが一番幸せ」という言葉に示されているが 「独居高齢者の生活満足度の方が同居高齢者より高い」というデータもある。 

問題は、一人暮らしか同居かという世帯の形態ではなく、その高齢者の人間関係の在り方が問われなければならないのであろう。特に男性の一人暮らしはいろんな意味で深刻な問題を抱えているように思われる。

「世界一孤独な日本のオジサン」の著者岡本純子氏は東洋経済オンラインのコラムの中で次のように記している。

「オジサンはなぜ孤独になるのか。それは男性と女性の人との付き合い方の違いに関連している。男性は人と繋がる時、何かの媒介、物、経験などが必要である場合が多い。一緒にスポーツをする、ゲームをするなど、何かの物理的なきっかけを要するのだ。女性は、そうした媒介がなくとも、関係性を成り立たせることができる。何時間でも電話をしながら、お茶を飲みながら、延々と会話を成り立たせることができる。恋バナ、夫の悪口や子供への不満、語るネタは売るほどある。一方で、男性同士が面と向かって、うわさ話に興じる姿はあまり思い浮かばない。その間には将棋があったり、スポーツがあったり、もしくは仕事の話だったり。このように、年を取るごとに友人をつくるのが難しくなる中で、特に中年以降の男性は孤独というトラップに最も、陥りやすい人たちということになる。」

 思い当たる男性は決して少なくないであろう。

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