再び、ケアマネの更新制の廃止を
この問題は以前にも「お仕着せの更新研修に意味はあるのか」というテーマで「ケアマネのつぶやき」に掲載した。最近、 淑徳大学の結城康博氏が「ケアマネの更新研修は廃止せよ 女性活躍にも逆行 有資格者がいつでも復帰できる制度に」というテーマで「介護ニュースJoint」の2023年8月1日に掲載している。その中身は、「“ケアマネジャー枯渇”という最悪の事態に陥りかねない」という氏の危機感から書かれたものであるが、現場でケアマネの仕事に追われている人間としても十分納得のいく主張であると考えたため、私なりの意見を再度この欄で取り上げることとした。
現在、令和6年度の介護保険の改定に向けて社会保障審議会介護給付費分科会で議論されているが、その中でも大きな課題がヘルパーやケアマネ等の人材不足の問題であることがその議論の中からうかがえる。これから日本は超高齢者急増時代を迎える。85歳以上人口急増により、要介護者が著しく増えると言われるなかで、すでに各地でケアマネが足らないという声が上がっている。さらに、介護保険の開始とともにケアマネになり仕事を続けてきたベテランたちがその仕事を終えようとしている。そうすると一気にケアマネ不足は深刻さを増すこととなる。そのことにより介護保険の利用をできない地域や高齢者がでてくることが危惧される。ケアマネの人材不足対策は喫緊の課題である。
この問題については、去る5月、関東の10都県の知事からなる「関東地方知事会」が、このまま人材不足が進めば高齢者が必要なサービスを受けられなくなるほか、介護施設・事業所の運営も立ち行かなくなると、介護支援専門員実務研修受講試験の受験資格を緩和するよう国に求める方針を固めた、と報道された。国は、ケアマネの資質の向上図る目的で2018年度から、ケアマネの受験資格を社会福祉士、介護福祉士、看護師など国家資格保有者や相談支援業務に従事してきた人に限定したこともあり、それ以降受験者数が急速に減少したことを問題としているのである。しかもケアマネの受験合格率がここ最近20%前後という超難関の試験となっている。これらはケアマネの入り口が狭く設計されている問題であり、そこでの問題を解決することにより、ケアマネの不足を解決しようとする提案である。
この入り口に関する問題と同時に、せっかく厳しい受験を勝ち抜いてきて得た介護支援専門員(ケアマネの正式名称)を待ち受けているのは5年ごとの更新研修である。更新するためには、経験に応じた「研修」を受講し、その後、資格更新の申請を行うのであるが、期限内に更新できなかった場合、資格は失効してしまう。現に、せっかくケアマネの資格を持ちながら看護業務や他の業務についていたため更新研修を受けられず、資格を失っている人も少なくない。
日本にはいろんな専門職と言われる職種がある。その中で更新研修を受けなければその仕事が続けられない専門職とはケアマネぐらいのもの。かって、学校の教師にもこの更新制が導入されたことがあったが、教員の不足や負担増の一因と指摘されまもなく廃止された。なぜケアマネにだけこんな厳しい制度があるのか、随分おかしな話である。
そうでなくても忙しい現場を抱えた介護支援専門員ばかりである。貴重な時間をつぶし、高額な受講料を払い、参加を義務付けられるお仕着せの更新研修がなければ、現場のケアマネの負担をかなり軽減することができると同時に人材不足解決の一助になると考える。
ではケアマネの仕事の質の担保のための研修はどうあるべきか、ということになる。この点では先に「お仕着せの更新研修に意味はあるのか」の中で私見を述べたのでここでは割愛する。興味のある方は過去のケアマネのつぶやきを検索していただきたい。