改定課題分析標準項目を考える
厚生労働省は10月16日に出した介護保険最新情報Vol.1178で、介護支援専門員がケアプランを作る際などに用いる「課題分析標準項目」の一部改正を通知した。それによると全体の項目数は変わらないが、それぞれの項目の中身が詳しく書かれ(「具体的に例示」され)ている。それぞれの項目の中の具体的なアセスメント項目が増えたのである。なぜこのように改定が行われたかについては、同時に発出されたQ&Aの中に次のように記されている。「令和6年4月から開始される新たな法定研修のカリキュラムにおいて『適切なケアマネジメント手法』が盛り込まれることを踏まえ、当該手法との整合性を図る必要があることから」とされている。 要は今回の改定の中心は「適切なケアマネジメント手法」を反映させたのであると考えて間違いないであろう。
そこで問題となるのは、今回の標準項目に例示されたアセスメント項目の多さ、さらに「適切なケアマネジメント手法」で求められるアセスメント項目の多さに、現場のケアマネジャーとしてはたじろぐことになる。「適切なケアマネジメント手法」によれば「基本ケア」では44項目の「想定される支援内容」につきそれぞれに6~17項目程度の「主なアセスメント項目」が示されている。さらにこの「基本ケア」の上に「疾患別ケア」でのアセスメントが求められることになる。全部の項目を漏れなくアセスメントしようとすると膨大な項目となる。しかも、「適切なケアマネジメント手法」の目的が「ケアマネジメントの質の標準化を図るため」そしてその具体化として「情報の収集・分析・検討の視点に抜け漏れがないようにする」ことが必要であるとすれば、この膨大なアセスメント項目を日々の実践でどう向き合うかが課題となる。この問題の解決には私はAIを活用する以外にはないように考える。「適切なケアマネジメント手法」を作成した人たちの中ではこのことは当然考えられていたのであろうが。そして、すでにAIを活用したケアプラン作成支援ソフトも現場に提供されようとしている。ワイズマンでは 「AIを用いたケアマネジメント支援ツール「SOIN」(そわん)」という名前で提供されている。
「適切なケアマネジメント手法」がこれまで要介護高齢者を支援する上でやしなわれてきた膨大な知見を体系化し、それに基づきアセスメントやモニタリングの抜け漏れをなくそうとする以上アセスメント項目が多くなることは避けられないし、その際のAIの活用は不可欠であろうと考えられる。
さて、今回の課題分析標準項目の改定の中でもう一つ注目したのが、7「主訴」が「主訴・意向」となった点、さらに2「生活状況」が「これまでの生活と現在の状況」に改定された点である。意思表示の困難な認知症の人の場合は主訴という表現だけではその思いをくみ取ることは難しい、そこに意向を加える意味があるのではないか。しかも意思表示の困難な人の意向、思いをくみ取り、意思の推定が必要な場合にはそれを適切に行うために、その人がどのように生きてきたのか、「これまでの生活」の把握は不可欠である。そこには「適切なケアマネジメント手法」の基本方針の中の「尊厳を重視した意思決定の支援」が反映されている。
さらに言うなれば、この部分はAIではできない。利用者やその家族とのふれあい、人と人の価値観や感性の交流の中でこそ,
それが可能になると考えている。今後ケアマネジメントの実践において、特にアセスメント場面におけるAIの活用は避けて通れないであろうし、これをうまく使いこなせる力がケアマネジャーに求められるであろうが、けっしてケアプランの作成をAIに丸投げすることはできない。ケアマネジャーの専門職の真価が問われるのはこれからも変わりはないであろう。