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ケアマネのつぶやき

マイナ保険証の本当の危うさ

 2023年度の補正予算案に計887億円のマイナ保険証の関連費用が盛り込まれた。これは紙の保険証を廃止する2024年12月2日まで1年となったにもかかわらず、現在のマイナ保険証の利用率が2023年4月に約6.3%だったが、同年11月には約4.3%と下落しているという、国にとっては厳しい現実を打開しょうというものである。武見敬三厚労大臣が12月22日の記者会見で『あらゆる手段を通じてマイナ保険証の利用促進に向けて努力する』との発言を裏付けるものである。国はすでに、マイナカードには2兆円以上を注ぎ込んでいる。現状の紙の保険証で何ら問題ないにもかかわらず、それほどの国費を費やしてまでマイナ保険証に固執する国の姿勢はやや異常に感じられる。沖縄の辺野古基地建設の問題でも同じように、権力者というのは一旦決めたら、立ち止まって修正したり、後戻りができないようだ。こうした権力者の姿勢は民主主義を危うくしているようにも思える。

 もしマイナ保険証になったら介護の現場ではどのような問題が起こるかを想定してみた。まず、認知症の方や高齢者で保険証を紛失したということは決して珍しいことではない。これまでも何回も再発行の手続きをケアマネが支援することがあった。これがマイナ保険証になると、「では再発行の手続きをしましょう」ということだけでは済まなくなりそうである。紛失した時点でコールセンターに届け出なければならない。そのうえで再発行には時間がかかるといわれており、その間は全額自己負担になるそうだ。「マイナンバーカード総合サイト」によれば、「紛失など例外的な事情により、手元にマイナンバーカードがない方が保険診療等を受ける際の手続きについては、検討が進められております。」
 また、施設に入所している人のマイナ保険証の申請、管理をどうするのかは施設にとっては頭の痛い問題となる。これに対しても先の「マイナンバーカード総合サイト」によれば「施設に入所している方なども含め、すべての方がマイナンバーカードを持ちうるように関係省庁が全力で努めてまいります。」

要は細かいことはまだ検討中ということなのだ。いずれにしても、利用者のマイナ保険証の管理をめぐってケアマネは新たな厄介な問題に関わることになりそうである。介護保険現場以上に医療機関の窓口では様々な問題が起こると指摘されているが、ここではその点は触れない。

では、マイナンバーカードを持っていない人や保険証とひもづけしていない人はどうなるのか。こうした人には健康保険証の代わりとなる「資格確認書」が発行されるそうである。申請をしなくても、該当する人には無料で交付される予定。ただし「資格確認書」には有効期間があり、健康保険組合から発行される資格確認書の有効期限は最長5年間、その他の資格確認書の有効期限は1~2年。しかも、マイナ保険証を持っていない場合、窓口の負担が高くなる。国は診療報酬に差をつけて、マイナ保険証の利用促進を図るというここでもせこい意図が見え見えである。

もっと重要な問題は個人情報が危うくなるという問題だ。この点では、日弁連情報問題対策委員会の水永誠二副委員長は「前身の住基カードと比べてもマイナンバーカードはプライバシー保護の観点が後退している。個人番号と氏名、住所、生年月日、性別、顔写真の情報が表示されている」と指摘している。また 「名寄せやプロファイリング(人物像の推定)によるプライバシー侵害の危険がある。国民皆保険制度の日本で健康保険証を廃止することは、マイナンバーカードの事実上の強制で、本人の申請により発行すると二つの条文で明記している番号法に違反する」とのべている。

 こうした危惧が現在のマイナ保険証の利用率の低さにつながっているのではないか。何よりも今回の自民党の派閥による長年の裏金づくりにみられる、いまの権力者に「あなたの個人情報を任せてられますか?」

いずれにしても、こうした根本的な疑念や現場の疑問に答えることなく、今年の12月の紙の保険証からマイナ保険証への移行に向けてことは進んでいくのであろうか。

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