介護支援専門員の仕事の範囲はどこまで?-その1-
介護支援専門員(ケアマネジャー)になるのには一定の経験、国家資格の上に合格率20%前後という厳しい試験に合格しなければならない。試験は毎年行われており、昨年で25回になる。今まで介護支援専門員の試験に合格した人は739,215人にのぼる。ところが実際に従事しているのは188,170人にとどまっている。歩留まりは26.6%である。多くの受験合格者が介護支援専門員として働いていない、あるいは、かって働いていたが今は辞めてしまっているのである。介護支援専門員は介護保険にはなくてはならない人として、社会的には期待されている割にさみしい数字である。
この数字は、長寿社会開発センターが行った「ケアプラン作成業務に従事していない介護支援専門員に対する実態調査」(令和6年3月)に示されたものである。この調査の目的は、せっかく苦労して取った介護支援専門員の仕事を、なぜやめてしまうのかを明らかにしようというものである。
同調査によれば、転職理由の1番目が「仕事内容に魅力を感じられなかった」、2番目が「給与が低い」となっている。さらに、「今後復職を考えている」と答えたものはわずか14.2%しかない。かなり最悪のイメージである。「介護支援専門員として従事していた時に感じていた負担」に対する回答の第2位が「利用者、家族からケアマネジメント業務以外のことを求められること」で57.3%に上っている。また、「介護支援専門員として復帰すると仮定した場合に重視する取り組み」に対して一番多い回答が「ケアマネジメント業務の簡素化」第2位が「ケアマネジメント業務範囲の明確化」となっている。こうした結果は、給与等の待遇の問題もあるが、今の介護支援専門員の仕事、働き方にも問題が多いということなのであろう。そしてその一つとして、ケアマネジャーの仕事の範囲をめぐる問題が、現場のケアマネジャーの負担となっていることを示している。
この4月から厚生労働省の中に「ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会」がもたれている。その検討会に提出されて資料の中で「業務範囲外と考えられる依頼への対応」というテーマの調査結果が示されている。
それによると
「緊急性が高く自事業所で対応せざるを得なかった」 72.5%
「緊急性は高くないが他に対応できる人がいなかったため」57.2%
「利用者や家族から強い要望があり、ケアマネジャーが
対応せざるを得なかったため」 44.9%
「医療機関等他の機関からの要請があったため」 41.9%
かってこの「ケアマネのつぶやき」のなかで「ケアマネジャーは何でも屋」としてふれたことがある。「介護支援専門員の仕事の範囲はどこまで?」という問題は現場の介護支援専門員にとって悩ましい問題であり、必ずしもすっきりした回答がありそうもない課題なのであるが、もう少しこの問題にこだわってみたいと考えている。