高齢者にとって厳しい話ばかり
物価高騰が止まらないなかで、今年10月から原則1割負担の75歳以上の人の医療費窓口負担に2割負担が導入されたばかりにかかわらず、昨今、高齢者の負担が増える話ばかりが目立つ。
介護保険制度の「給付と負担」の見直しをめぐる議論の中で、厚生労働省はサービス利用料の負担割合が2・3割となる人の対象拡大などを優先して検討する考えを示した。早ければ2024年度からの実施を目指している。介護サービスの利用者負担は原則1割となっている。ただ2015年からは一定以上の所得がある人で2割負担が導入された。さらに2018年からは「現役並み」の高所得者を3割負担にした。 ただ2・3割負担の人は全体の1割弱だと言われている。一方、75歳以上が入る後期高齢者医療は、今年10月から一定以上の所得がある人の窓口負担が「1割負担」から「2割負担」に引き上げられ、全体で3割の人が2・3割負担になると試算されている。厚労省はこれを踏まえ、介護保険の利用料でも2・3割負担となる人を広げたい考えだ。細部はまだ明らかにされていないが、現在介護保険を利用して1割負担の利用者のかなりの部分が倍の利用料を支払はねばならないことになる。
利用料だけではない、65歳以上の高齢者が支払う保険料についても、「高所得者」を対象に保険料の引き上げも検討されようとしている。
これだけではない、2024年から実施される医療制度改定で、後期高齢者医療の一人当たりの保険料が平均で5300円ほど上がるという試算が示された。現在、出産した人に支払う出産一時金は公的医療保険を財源としているが「世代間の公平を図る」という理由で、75歳以上の高齢者が加入する後期高齢者医療制度から新たに拠出するとしている。その試算では、「出産育児一時金」を現在の42万円から47万円に増やすなど見直した場合、75歳以上が加入する後期高齢者医療制度の保険料は2024年度に1人当たり平均で年5300円増えることになるというのである。
また、高所得者の保険料の年間上限額を66万円から80万円へと大幅に引き上げる。また、全体の4割にあたる人の保険料率も上げるという。
さらに、75歳以上の医療費全体の約4割を払う現役世代の負担割合を減らし、約1割となっている75歳以上の保険料負担も見直すとしている。75歳以上の保険料負担は増額で1000億円以上増え、現役世代の負担軽減に充てるとしている。
これが、国が言う「全世代型社会保障改革」というものである。