自立を考える(その5)
未来投資戦略と自立支援
未来投資会議という名の会議がある。内閣総理大臣を議長とし関係する国務大臣や有識者が参加し経済成長に資する分野における投資を官民が連携して進めようというものだそうである。
平成28年11月10日第2回未来投資会議が開催された。その席で、竹内孝仁国際医療福祉大学大学院教授は自らが提唱する「自立支援介護」の説明を行い、「自立支援介護」が行われれば「現在の要介護者を半減できる」と主張しています。こうした意見を受けて安倍総理が「2025年は目前。健康寿命の延伸が喫緊の課題。『予防・健康管理』と『自立支援』に軸足を置く新たな医療・介護システムを2020年までに本格稼働させる」格調高くうたい上げている。そして、その後未来投資戦略として平成30年6月15日に閣議決定されることになる。その内容の一部を以下に紹介する。
「自立支援・重度化防止に向けた科学的介護データベースの実装
自立支援等の効果が科学的に裏付られた介護を実現するため、高齢者の状態、ケアの内容などのデータを収集・分析するデータベースの運用を平成32年度に本格的に開始する。これにより、効果が裏付けられた介護サービスについては次期以降の介護報酬改定で評価する。」
そして、この未来投資戦略に基づき、厚労省が主導して「科学的に裏付られた介護にかかわる検討会」が開催されている。そこでは、2021年の報酬改定に向けて、200項目以上にわたるデータを収集・分析し、それに基づいて、自立支援の裏付けが取れたサービスの報酬を手厚くするとしている。
この検討会は、昨年3月の中間取りまとめを行い、介護領域のエビデンス(科学的根拠)の構築に向けた新データベース「CHASE」を示し。その本格運用に向けて、追加的なデータ収集を議論しているそうである。この「CHASE」が介護現場にとってどのような影響をもたらすことになるか、現場のケアマネジャーとしては気になるところである。 「自立支援・重度化防止」の名目で介護保険のさらなる劣化が進むのではなかと危惧するのは穿ち過ぎた見方であろうか。