尊厳を支えるケア
利用者の尊厳を支えるケア、これは介護の目指す究極の目標であり、介護にかかわるすべての人にとっての基本的な価値である。
しかし、尊厳という言葉は、普遍的な価値、理念であるがゆえに、だれも否定はできないと同時に、個別、具体的にはなかなか説明しにくい。とりあえず次の説明をよりどころに、実践に役立つという視点で考えてみたい。
「『高齢者が、尊厳をもって暮らすこと』を確保することが最も重要であることから、高齢者がたとえ介護を必要とする状態になっても、その人らしい生活を自分の意思で送ることを可能にすること、すなわち『高齢者の尊厳を支えるケア』の実現をめざすことを基本にすえた」(『2015年の高齢者介護―高齢者の尊厳を支えるケアの確立に向けてー』高齢者介護研究会報告書2003年6月)
上記の報告書の文章からいえることは、高齢者の尊厳を支えるケアにとって重要なキーワードは「その人らしい生活」と「自分の意思」ということになる。
まず「その人らしい生活」という点に関しては次のように考える。人は、その人が生きてきた人生の延長として老いて生きていくということである。したがってアセスメントにおいて「その人らしい生活」を明らかにするためには、その人の生きてきた生活史を知ることは不可欠であろう。
但し、その人らしさというのは、対人援助の視点から考えると、ストレングスであると同時に、時として要介護状態になって暮らしていく障害にもなりうる。具体的には利用者のらしさと、ケアマネジャーの価値観の葛藤となる。この辺が対人援助の難しさである。
もうひとつの「自分の意思」が重要であることはいくまでもない。「自分の意思」=自己決定のないところに「その人らしい生活」はあり得ないのである。自己決定の重要さと、現場の実践における難しさは既に前にふれたことなのでここでは省略する。
このテーマについて、このつぶやきで述べるにはあまりにも大きなテーマであり、適切ではないと思うが、そんな問題意識をもって実践に臨んでいるということを、自分なりに整理してみたかった。