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利用者本位を考える その1

介護保険がその基本的な理念の一つとして利用者本位を掲げていることは衆目の認めるところである。介護保険の利用者本位とは、利用者の選択により、多様な主体から保健・医療・福祉サービスを総合的に受けられるものであるとされている。

介護保険では利用者本位という言葉が使われているが、同様の意味を持つものとして利用者主体、当事者主権といった言葉も使われている。こうした言葉の違いは別の機会に考えるとして、ここでは介護保険の利用者主体について考えてみたい。

 介護保険の利用者主体を具体的に実現する仕組みとして、居宅介護支援(ケアマネジメント)が組み入れられているということは「指定居宅介護支援等の人員及び運営に関する基準」の基本方針の「指定居宅支援の事業は、利用者の心身の状況、その置かれている環境等に応じ、利用者の選択にもとづき、適切な保健医療サービス及び福祉サービスが、多様な事業者から、総合的かつ効率的に提供されるよう配慮しておこなわなければならない」という一文からも明らかである。

 これからみても明らかなように、利用者本位とは利用者に選択権が保障されているかどうかが問題となる。今の介護保険サービスの現状ははたして利用者本位となっているのであろうか。

 残念ながら介護保険のこの20年間は、利用者の選択権を狭めてきた歴史でもあった。要支援認定を受けると介護予防ということで訪問介護や通所介護の利用回数は大幅に制限される。要介護認定申請を行う人達は様々なニーズをもって申請を行うにもかかわらず、要支援と認定されたらすべて介護予防ですというのは国の勝手であって、そこでの利用者本位は極めて限られたものになってしまう。要介護度によってはベッドや車いすの利用も制限されるようになった。施設入所も要介護3以上でないとダメですとなった。訪問介護の生活援助も実質的な回数制限が示されている。こうした一連の介護保険の経緯は、利用者のニーズやそれに基づく選択の範囲を徐々に狭め、介護保険の基本的な理念であった利用者本位を危うくしている。利用者本位ではなく国の財政政策本位への後退というべきであろう。

 しかしこうした利用者本位の基本原則の危うさは単に国の政策によるものばかりでもないと考える。それはサービスを提供する我々の中にもあるのではないか。施設入所をした場合、そこにどれだけ利用者の選択肢や自己決定が保障されているのであろうか。利用者はお世話になっている気持ちが強いし、自らの意見を主張する利用者は施設側からは決して好まれはしないであろうということは推測される。デイサービスは在宅での生活を継続していくうえで重要な役割を果たしている。しかしそこで利用者個々の好みや選択肢、何よりも参加者の自己決定権はどの程度具体化されており、利用者本位が実現されているのであろうか。そうした問いかけに対し、施設の人員や基準といった制度による制約があるからという反論があるのは当然予想される。そうした課題はあるとしても、施設サービスや通所サービスといったサービスの中でどれだけ利用者に選択肢が用意されているかは介護職として自省すべきことであろう。

翻って、ケアマネジャーも制度の枠の中での仕事になれて利用者本位の原則を見失っていないか、時には立ち止まって考えてみることも必要ではないかと思う。

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