かけがえのない宝物ー3
――看取りを考える3――
看取り・・その人にとっての長ーい人生の最期の場面、そこには、特別な空気と時間が流れているように思います。それは、一緒に過ごしたこれまでの時間を含めて、去って行く人がご家族に残していかれる、何物にも代えることのできない宝物です。
お母さんを介護して看取りをされた息子さんと、ご主人を介護して見送られた奥様の言葉をご紹介させていただきます。
ご主人が末期癌と診断され、当初はとても混乱していたÅさん。
退院後、ご主人は思いのほか元気になり、病気のことなど意に介さないかのように、家族そろって旅行をしたり、好きな将棋大会で賞をもらったりして過ごされ、奥様は影のようにそばにいて、ご主人を支えました。
そうして三年間の在宅介護を経て、ご主人はこの世を去っていきました。
「結婚して三十年、これまで夫には色々不満もあったけど、この三年間は、良い所が沢山見えて、本当に幸せな日々でした」
お父さんお母さんが相次いで要介護になり、お父さんが亡くなられた後も、入退院を繰り返すお母さんを六年間、一人で介護をされた息子さん。
「母は、要支援1より要介護5まで、徐々に介護度は重くなりましたが、母と私の希望で在宅で介護することに決め、医師、看護師、ケアマネジャー、ヘルパーさん、福祉用具の方と、多くの専門職の人たちに助けて頂き、最期まで自宅で過ごすことができました。
私も、重度になっていく母のために、いろいろと方法を覚えての介護でした。
初めのころは介護に悩み、うつ状態にもなりましたが、不思議なことに、母の状態が重くなるにつれて、介護することの楽しみが心の内より湧いてきました。
もちろん体はきつく感じていたのですが、気持ちは穏やかになり、母の笑顔を見ることがうれしくて、私も笑顔になることが多くなりました。
母の介護の経験は私の宝物です。これは母よりの最後のプレゼントだと思っています」
お二人が介護をされていたころは、在宅で看取りをしていただける先生が少なく、直前まで在宅で過ごされ、最期の診断を受けたのは病院でした。
「あなたがいてくださって、とてもありがたかった。本を読んだり講義を受けたりして、頭で知ってはいたけど、「寄り添う」というのはどういうことなのか、身をもって教えてもらいました」ご主人の葬儀が終わった後で訪問した時に、ご自身介護職であるAさんから頂いた、ケアマネにとっては何よりもうれしい言葉でした。
「介護の話をするとき、自分の経験が役に立つなら、いくらでも使ってもらっていい」と快諾してくださったお二人に、心から感謝します。
「本当に自宅で最期まで看れるやろか・・」在宅での看取りを選択された後も、迷ったり悩んだりするご家族の気持ちに寄り添い、一緒に迷いながら、残されたご家族が、大切な宝物をしっかりと受け取って、これからの人生を生きていかれるよう、そのために、ケアマネジャーとして、自分が今、しなければならないことは何か、アンテナ全開で受け止めて、お役目を果たしたいと思っています。
(―看取りを考える1.2.3― は、「いこら会報誌」№4より、あすか事業所の職員が寄稿した文を転載したものです)