要介護者も総合事業の対象に
厚生労働省は介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)の対象者を要介護者にも拡大するという「介護保険法施行規則の一部を改正する省令案」についてパブリックコメントを実施し、関連省令を今秋ごろに交付し、2021年度から実施しようとしている。
要支援者が要介護認定を受けると、それまで利用していた総合事業のサービスの利用が継続できなくなる点について、本人の希望を踏まえて地域とのつながりを継続する観点から、具体的には、市町村の判断により、要介護者についても介護予防・生活支援サービス事業の対象とすることを可能とするとしている。
総合事業は訪問介護、通所介護サービスが介護保険の給付から外され市町村の事業として実施され、その利用回数も少なく制限されている。一応「本人の希望」を前提とするとしているが、市町村の判断によっては、要介護の認定を受けた利用者についても訪問介護と通所介護のサービスの利用に規制が行われる可能性が生じることとなる。
さらに問題は、これによって、厚労省がこれまでその実施をもくろんできた、総合事業の適用範囲を要介護1・2にまで拡大しようとすることに道を開くものになるということである。もしこれが実現すれば、要介護1・2と認定されても、介護保険サービスの訪問介護サービスと通所介護サービスの利用ができなくなり、回数が大幅に制限された地域支援事業しか利用できなくなる。この結果、要介護高齢者の生活に重大な困難をもたらすことは容易に想像できる。
こうした要介護者の介護保険の受給権にもかかわる重要な変更について、きちんと議論を行うこともなく単なる省令の改正で済ますことは許されないと考える。