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つぶやき

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ケアマネのつぶやき

ガン末期の利用者にとって介護保険の壁

ガン末期の方が最期の時を自宅に帰って、家族とともにその時を過ごすということがある。そうした場合、ケアマネジャーにも病院から、ガン末期の方が帰りますのでよろしくと依頼されることがある。

その方にとって多分最後のひと時となるであろう自宅での生活を少しでも快適に、心穏やかに過ごしていただけるように、集中して心配りをしながらの短い期間のお付き合いとなる。

ここで問題となるのは介護認定が間に合わないため、介護サービスが利用できないという場合が多々あるということである。そうした利用者に、残された時間はそんなに多くあるわけではない。入院中に介護認定申請をし、認定を受けていただいていれば問題はない。自宅へ帰ってから、ケアマネジャーが認定申請代行を行うこととなると介護認定が間に合わないこととなる。

Aさんの場合

月曜日、O病院の地域連携室から、「がんの全身転移で末期の方ですが、在宅に帰られますのでよろしく」と電話をもらう。翌日火曜日、訪問し介護ベッド利用と訪問看護の手配を行う。同時に介護認定申請を行うことを確認、同日認定申請代行を行う。保険者の認定係に、ガン末期のため至急認定調査を行っていただくよう依頼し木曜日認定調査の予定となる。ところがその日、あいにく利用者の体調が悪く病院受診のため認定調査を行えず翌週の月曜日に認定調査を変更する。しかし、その日曜日、急変しお亡くなりになった。在宅で家族に囲まれてのわずか1週間。ご本人や家族にとっては十分意味のある時間を過ごすことができたのではと思う。しかし、介護認定ができなかったため、ベッドは自費でご負担いただくこととなった。

Cさんの場合

K病院から、がんの末期の患者さんですがケアマネをしてもらえないかの依頼があった。それがあったのが月曜日の午後である。翌日利用者さん宅を訪問する。訪問看護については病院からかかりつけ医への連絡があったため火曜日からの訪問が決まった。利用者や家族と相談し、とりあえずベッドと車いすの手配を行う。その後、かかりつけ医からのトイレまでの車いすの利用は困難、ポータブルトイレが必要との指示で、急遽ポータブルトイレを届ける。しかし、介護保険の認定が間に合うかどうか、もし介護保険の利用がダメな場合も考慮し、ポータブルトイレはケアマネの事務所に偶然保管してあったポータブルトイレを搬入した。そんなドタバタの中で、何とか介護保険の認定申請をと考えていた。しかし土曜日、ご家族に見守られて最期を迎えることとなった。

如何せん介護保険はこうした最後のひと時を在宅で過ごそうとする人々の願いを保障するものとはなっていない。医療保険はこうした時でも臨機応変に対応することは可能である。訪問看護はこうした場合医療保険で行われるため、何とか対応可能となる。ところが介護保険は、認定申請、訪問調査等々一連の手続きを経て、概ね30日ほどでサービス利用が可能となる。今回のような一刻を争う、ガン末期で在宅での生活を希望する人々の介護を保障するものとはなっていない。

いずれのケースにおいても在宅で生活を過ごすことができるのは短い限られた期間でしかないことが多い。ケアマネジャーは限られた期間に何ができるのか、利用者や家族の思いも引き受けながら、そこでこの問題を解決するために集中して取り組むこととなる。ことに利用者の死を間近にひかえたケアは精神的にも緊張感を強いられる。長期にわたる高齢者の介護とは異なるケアマネジメントを行うことが求められている。

ここで介護保険が成立しないと、ケアマネジャーの取り組みは全く評価されないこととなる。同時にこの間の介護サービスはすべて自費となり利用者の負担も大きい。

まず病院のMSWにお願いしたい。退院までには少なくとも認定申請だけは済ましておいてほしい。一刻を争うことが多いこうしたケースで、とりあえず認定申請をしておいていただければ、ケアマネは介護認定までの道筋をつけることが可能になる場合がある。

もう一つは、介護保険はこのようにがんの末期の人たちのケアを想定していない。だとするならば、緊急に対応が必要なこのような場合、緊急避難的対応として、例えば主治医が末期のがんでそれほど時間が見通せないと判断した場合には、通常の認定申請の段階を経ずに、サービス利用を可能とする手続きを可能にしてもらえれば、救済されるケースは少なくないと考える。

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