混乱する入浴介助加算Ⅱ
この4月の介護報酬改定で、デイサービスや老健のデイケアにおけるサービスに「入浴介助加算Ⅱ」が新しく設けられた。この加算は、「利用者の自宅での入浴の自立を図る観点から」「利用者宅の浴室の環境を踏まえた個別の入浴計画を作成し、同計画に基づき事業所において個別の入浴介助を行うことを評価する」ものとして設けられてものである。
この加算は、先に述べたように、利用者が居宅において入浴を行うことができるようになることを目的として創設されたのであった。ところが、ややこしいのはその後、厚労省が出したQ&AVol8で示された説明である。それによると「なお、自宅に浴室がない等、具体的な入浴場面を想定していない利用者や、本人が希望する場所で入浴するには心身機能の大幅な改善が必要となる利用者にあっては、以下①~⑤をすべて満たすことにより、当面の目標として通所介護等での入浴の自立を図ることを目的として、同加算を算定することとしても差し支えない。」としたのである。
その①~⑤にあげる要件に関しては、長くなるのでここでは省略する。
この新設された加算についていろんなところで波紋が広がっている。一部のメディアで「ケアマネジャーの理解が得られないため通所介護で加算算定ができずに困っている」という記事が報道された。これにたいし日本介護支援専門員協会は「入浴介助加算Ⅱ」に関してケアマネジャーの緊急調査を行った。その中で通所事業所からこの加算について提案されたが居宅サービス計画に位置付けなかった理由に関する質問に対し、一番多かった回答が「利用者の状態にかかわらず全利用者一律に算定しようとしたから」36.3%。 「利用者や家族への加算算定の説明が十分にされていない」「利用者や家族算定に同意していないから」を合わせると34.6%。「利用者個々の自立支援に向けた計画が作成されていなかったから」16.7%となっている。
この地域でも、一律すべての通所の利用者に算定している事業所もあるが、全体としてこの加算を算定していない通所の事業所が多いようである。
問題は複雑である。根本的には厚労省が「利用者の自宅での入浴の自立を図る観点から」創設された加算が、自宅で入浴できなくてもこの加算を算定していいということになった、この揺れが問題であろうと考えている。
同時に、「利用者の状態にかかわらず全利用者一律に算定」している事業所の問題は指摘しておかねばならない。自宅に入浴できる環境がない高齢者であれ、とても今の状態では自力で入浴できないと思う利用者でも、なんでも一律にこの加算を算定しようとする事業所の姿勢は、本来のこの加算の趣旨からしてやはり問題と言わざるを得ない。こうした事業所に対して、ケアマネジャーはNOと言えるのかが問われている。この利用者にとって、とても自宅での入浴は無理と考えているケアマネジャーは「その必要はありませんと」さらに「利用者の自立支援という目的から見て、それはいったいどのような意味があるのですか」と。とかく「長いものには巻かれろ」という考え方は、ケアマネジャーの主体性を失い、人権感覚を鈍らせることになるように思えてならない。