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再び、利用者及び家族の生活に対する意向を踏まえた課題分析欄について考える

 先に、今年3月に示された厚労省の「居宅サービス計画標準様式及び記載要綱」の中の「利用者及び家族の生活に対する意向を踏まえた課題分析の結果」の記載をどうするか、現場では混乱があると指摘した。こうした現場の状態に対し「ケアマネジャー」誌の12月号に「ケアプラン新様式の変更点と書き方のポイント」という特集が組まれた。しかし、結論から先に述べると、この特集の中で示された「利用者及び家族の生活に対する意向を踏まえた課題分析の結果」の欄の書き方は、一つの考え方を示すものであったとしても、現場でこの欄をどのように書くかというケアマネジャーの悩みを決して納得させるものとは言えないどころか、新たに混乱を招くものではないかとの感想を持った。

改めて今回改定となったケアプランのこの欄の記載要綱をお示ししておく。

居宅サービス計画書(1)の「利用者及び家族の生活に対する意向」の欄が「利用者及び家族の生活に対する意向を踏まえた課題分析の結果」という表題に変わったこと。そしてその説明として「利用者及び家族が、どのような内容の介護サービスをどの程度の頻度で利用しながら、どのような生活をしたいと考えているのか意向を踏まえた課題分析の結果を記載する。その際、課題分析の結果として、『自立支援』に資するために解決しなければならない課題が把握できているか確認する。そのために、利用者の主訴や相談内容等を踏まえた利用者が持っている力や生活環境等の評価を含め利用者が抱える問題点を明らかにしていくこと。」下線部分が新たに追加された部分である。

 「ケアマネジャー」誌によると、今回の改定によるこの欄の記載に関して次のように説明されている。「必要なのは、現在本人が抱えている課題や持っている可能性や力を整理し、本人、家族の意向を叶えるために『まず何から始めればよいか』を明示することです。そうすることで本人、家族に支援の道筋をポジティブに思い描いてもらうことができます。」そしてこの欄に「『今後の方向性』という欄を設け」ることを提案している。

 これはいわゆる「ポジティブプラン」という考え方に基づく提案である。しかし、実際の利用者や家族は今困った問題を抱えている。それは、加齢に伴いこれまでの生活の営みが困難になったり、家族間の問題であったりさまざまである。それらは、そんなに簡単に解決の方向性を示すことができない問題が多い。また現状に対して利用者は「変わりたいけど変わりたくない」といった、相反する気持ちを同時に持っていることもよくある。そうした場合、援助者が一方的に解決の方向を示すことは適切ではない。いずれにしてもケアプランに基づく実践の中で利用者と援助者が協力してその解決を模索していくものである。そうした事例が多い中で、この欄で「今後の方向性」を示すことには違和感がある。

 「よく私の思いを理解し書いてくれた」とケアプランを説明した利用者から喜ばれる経験をしたケアマネジャーは少なくない。この欄の文章やその表現が、利用者や家族の思いに寄り添ったものであるからである。ケアプランの1丁目1番地はこうした共感的理解に基づいて利用者の思いをケアプランに綴ることにより、これが自分のケアプランだと思っていただくことが何より大切だと思っている。「『自立支援』に資するため」という言葉にとらわれて、ケアプランを難解にすることで利用者と家族の思いとかけ離れていくとき、そのケアプランはケアマネジャーのものにはなったとしても、利用者や家族のものから離れたものになりはしないか。 

さらに、もしこの欄で『今後の方向性』を書くとすれば、同じ1表の「総合的な援助の方針」とどのようにかき分けるのか、という疑問が残る。

いずれにしても、利用者や家族の生活、生き方、そして抱えた問題は極めて多様なものである。だとするならばケアプランの記載内容も決して一律なものではなく、多様なものであっていいと考える。

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